日本の国会議員や開発パートナー達が、エチオピアの学校やコミュニティを訪問し、日本国民が国際協力の必要性を理解するために、教育の重要性をどのように進めていくかについて、より深い理解を得ることができました。これは、今年に開催されるG7サミットに向け、開発協力大綱を改定中の日本が、国際教育協力の援助政策を再構築するのに貢献するものです。
2022年2月8日 鈴木憲和(衆議院議員)、鈴木貴子(衆議院議員)、大野容子(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)

(Credit: GPE/Kelley Lynch)
私たちは先月、教育のためのグローバルパートナーシップ(Global Partneship for Education/GPE)と教育を後回しにはできない基金(Education Cannot Wait/ECW)の支援を受けている学校とコミュニティを訪問しました。日本は今年広島で開催されるG7サミットを控え、開発援助大綱の改定を進めており、日本の教育支援政策を見直す上で、今回の訪問はタイムリーなものでした。本ミッションは、世界銀行、ユニセフ、セーブ・ザ・チルドレンのエチオピア事務所が共同で実施運営にあたり、本訪問にも参加しました。
エチオピアにおけるGPEの投資
現在、エチオピアでは300万人以上の子どもたちが学校に通っていないと言われています。同国は2004年からGPEのパートナーであり、GPEは助成金の中でも最も高額な5億5,800万ドル以上を長年にわたって投資しています。GPEは、エチオピア政府や開発パートナーと緊密に連携し、同国の教育システムを強化し、すべての子どもたちが質の高い教育を受けられるよう改善を図っています。セーブ・ザ・チルドレンは学校給食プログラムを実施し、その他の助成金は、世界銀行がグラント・エージェント(GA)として支援を行い、教育省によって実施がされています。
今現在も危機の影響を受けている、子どもたちや若者との出会い
私たちは、首都アディスアベバから東へ約600kmに位置するソマリ州とオロミア州の小学校4校を訪問しました。これらの学校は、一般教育における内部効率、公平なアクセス、質の向上を目的としたエチオピア政府の主要プログラムである「公平のための一般教育質向上プログラム(GEQIP-E)」の支援を受けている、または現在受けている学校です。
私たちが最初に訪問した2つの小学校は、ソマリ州都ジジガから車で1時間ほどの農村部にある小学校です。現地に向かう車中では、広大な大地が完全に乾き、深刻な干ばつで多くの作物が枯れているのが見て取れました。2019年頃まで州の境界で起きていた紛争により、破壊されてしまった学校もありました。小学校は以前GPEが支援し、現在、当学校でのプロジェクトはECWの支援のもと、セーブ・ザ・チルドレンとユニセフが実施しています。国内避難民とホストコミュニティの子どもたちの両方が学校に通っています。

(Credit: GPE/Hiba Mohamed)
教育は平和の礎
私たちは子どもたちの親たちにも会いました。彼らの多くは紛争を経験し、学校へ行くことができなかったと言います。それでも、子どもたちにとって教育がいかに大切かを語ってくれました。
紛争を経験し、平和を希求する彼らの声は貴重で重みがありました。教育が生きる力そのものであることを強く実感しました。
また、「教育は平和につながると思いますか」という私たちの問いかけに、彼らはこう答えました。「言うまでもなく、銃ではなく知識と知恵があれば解決できたことはたくさんある」、「あなたたちは、教育を受けたからこそ、ここにいる、それが答えではないか」と。
学校給食プログラムは重要
家庭で十分な食事がとれない貧困地域の子どもたちのために、毎日学校給食が提供されています。学校給食は大切な栄養源です。子どもたちが学校に通い、学ぶ意欲を高めるだけでなく、親が子どもを学校に通わせる動機づけにもなっています。児童婚が根強く残る地域では、親が教育や就学に対するインセンティブを持つことが重要です。
学校給食は、栄養面に配慮し、地域住民の協力のもと実施しています。水と衛生設備も整っています。特に女子が安心して学校に通えるように、安全で清潔なトイレが必要です。学校給食プログラムの実施は、子どもたちの就学率の向上に寄与しています。

(Credit: GPE/Hiba Mohamed)
セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナルは、GPEの支援を受け、2020年から教育省と協力して、いくつかの州・郡で学校給食プログラムを実施しています。この包括的なプログラムは、学校給食の提供だけでなく、水と衛生への配慮、省エネ調理、コミュニティへの参加、子どもの参加と心理的サポート、制度改善、能力開発にも重点を置いています。2022年からは、紛争や干ばつなどの緊急事態の影響を受けた子どもたちにも焦点を当てた学校給食プログラムを開始しました。学校給食プログラムは、就学率の向上と中途退学者の減少を目的としています。
インクルーシブ教育
訪問した他の2つの小学校は、ソマリア州の州都ジジガ市に位置しています。GPE/GEQIP-Eの支援を受け、教育省地域教育局が運営しています。教室の脇には車椅子が置かれ、聴覚障害児のための特別クラスでは手話を使った授業が行われていました。

教育大臣、AU委員と意見交換
アディスアベバのエチオピア教育省では、伊藤在エチオピア日本大使に同行していただき、Berhanu Nega教育大臣と意見交換を行いました。大臣からは、現状と課題についての説明があり、日本からの支援を必要としている点として、以下が挙げられました。
– 紛争で破壊された学校の再建
– 学校給食の提供の継続
– 就学前教育支援
また、識字率ほぼ100%の日本の経験から、就学前教育や初等教育が非常に重要であるとの認識で一致しました。

さらに、堀内AU日本政府代表部大使とともに、アフリカ大陸全体を管轄するAU教育・科学・技術・イノベーション担当委員のMohamed Belhocine委員とも面会しました。紛争や気候変動などの緊急事態、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響、債務危機などがアフリカの教育にとって大きな課題であり、教育資金も不足していると説明されました。日本の一般市民が国際協力の必要性を理解するために、どのように教育の重要性をアピールすればよいかを尋ねたところ、「教育は平和のための最も重要な資産である」という答えが返ってきました。委員からは、次回のアフリカ開発会議(TICAD)では、これまでなかった「教育」をメインテーマにしてほしいとの強い要望が出されました。
より効果的な日本の教育支援に向けて
エチオピアでは、まだまだ多くの学校と子どもたちが困難な状況にあります。限られた日本のODAを有効に活用し、効果を高めるためには、複数のドナーがバラバラに単発のプロジェクト型援助を行うのではなく、教育セクター全体で各アクター(教育省、ドナー、国際機関、NGOなど)が連携し、質の高いセクター計画を策定・実施できるような仕組みを強化することが必要です。日本の教育支援政策に対する第三者評価で指摘されたように、日本政府はマルチステークホルダー・パートナーシップを推進し、より効率的かつ効果的な教育支援を現場で実施することが必要と思われます。
私たちがエチオピアで目の当たりにした現実は、胸をしめつけるものでした。貧困と闘い、より公平な社会を築くためには、日本ではあたりまえだと思われているシンプルなことが大きな力になります。まず、栄養のある食事、きれいな水、少女や女性を含むすべての人が読み書きを学ぶことができること、そして数を数えることができることなどです。
エチオピアで出会った人々は、教育の重要性、必要性、可能性、そして教育を支援する国際社会への感謝の気持ちを繰り返し語ってくれました。このメッセージを私たちは日本に持ち帰り、日本で開発に携わる人々に伝えたいと思います。
英語の記事はこちらをご覧ください
In Ethiopia, Education Remains a Priority Despite Crises and Conflict