GPE Japan Youth企画: GPE Staff Interview Series第3回 木部崎彩職員

GPEのユースリーダーの活動の1つにGPEの現場で働く職員をインタビューするGPE Staff Interview Seriesという企画があります。GPEの職員が日頃どのような活動をしているのか、実際に働いている人にユースリーダーが話を聞いていくものです。

今回はユースリーダー・高橋真理奈さんが、GPE事務局シニア・カントリー・オペレーション・オフィサーの木部崎彩さんにお話を伺いました。動画はこちらです。

インタビューに答える木部崎さん

高橋: まずはじめに、自己紹介もかねて、木部崎さんのGPEにおける役割や仕事内容について教えてください。
木部崎さん: GPE事務局のカントリーチームリードという仕事をしています。GPEのフレームワーク、ツールそれから資金をつかってパートナー国の基礎教育がどうやって強化していけるだろうかというサポートを国ごとにチームで仕事をしていて、それをまとめる役割をしています。具体的には、GPEにはローカル;エデュケーション・グループ (LEG)といって、教育省を中心としたパートナーシップをつくって強化しようということをしていて、いろいろな教育のステークホルダーを教育省がリーダーシップを握りつつ国際機関や企業、学術機関、先生、PTA、市民社会すべてのステークホルダーが集まって、どうやって教育を良くしていくか、どうやって政策の改善につながるだろうかと一緒に考えることが一番重要です。

高橋: 木部崎さんはユニセフのカントリーオフィスで勤務されたのち、GPEに参画されたとのことですが、ユニセフなどほかの国際機関と比べて、GPEの教育支援の特徴は何でしょうか。
木部崎さん:最大の特徴はやはりパートナーシップですね。英語ではレバレッジといいますが、パートナーシップをつかって、より大きな結果につなげていこうとしているところが大きな特徴です。LEGを通じて改善していこうとしていて、彼ら自身が実施していくことをサポートしていきます。パートナー国では、「“GPE”がではなく、あなたたちがどうしたいか、あなたたちが教育をよくしてくかを考え、一緒に進んでいくためにGPEがサポートしている」とよく言っています。また、プログラムレベルでなくセクターレベルでものごとを考えている点もあります。GPEでプログラムもやっていますが、プログラムをマクロでとらえるセクターでみています。例えば、プログラムは予算が限られていますけれど、国家予算は大きいので、国家予算のどのくらいが教育に使われているか、どうやって教育に割り当てられるのか、割り当てられていても無駄がなく使われているか、貧困層や女子、障害のある子どもに行き届いているかー。資金を増やす、それから、ある予算をどうやって使うかを見ています。教育省とLEGに一緒に分析してもらい、改善の必要性を感じてもらい、それによってより大きな結果につなげていくことを目指しています。うまくいけば大きなインパクトが得られますし。

それから、GPEは援助機関ではなくパートナーシップなので、ユニセフ、ユネスコ、世界銀行など他の機関への資金供与を通して教育を支援しているのも大きな特徴です。そして、GPEのプログラムの内容については「このお金がどうやったら子どもに一番有効に使えるか」はLEGに決めてもらっているのです。他の援助機関もプログラムをつくるときにステークホルダーコンサルテーションで意見を聞いていますが、GPEではさらに重点をおいている点が他の機関と異なる特徴です。

高橋: ユース時代はどのようにお過ごしでしたか?GPEで働くようになった経緯や、教育協力に興味を持ったきっかけがありましたらお聞かせください。
木部崎さん:小さいころアメリカで7年過ごしているんですけど、9歳のときに家族旅行でメキシコに行ってその時に初めて途上国の貧困を目の当たりにしました。ホームレスの親子を見てハッとしたのが初めのきっかけです。中学生になって日本に戻ったとき、テレビでコソボの紛争が放送されていて、その中に、日本人女性に着目した番組があって、その方のことをいいなと思ったことがありました。それから、日本ユニセフ協会がファンドレイジングの番組をやっていたのをみて、中3の時に、子どものために仕事をするのっていいなと思い、ユニセフに入りたいと思いました。ユニセフで働くためには大学院に行く必要があり、入学前にNGOのインターンシップでHIV予防プログラムをやっていて、コートジボワールにモニタリングに行ってきてくださいと言われました。3ヶ月間田舎で過ごして、衝撃的でいい経験になったのですが、その時に、「どうやったらたくさんの人のサポートができるだろう」と考えた時に、教育だと思いました。モノやお金をあげても解決にならない、みんなが自分の人生をどうやって良くしていけるかー、その切り開いていく力、社会を良くしていける力を得るのは教育だと思い教育に決めました。

ユニセフのマダガスカル事務所、ネパール事務所で仕事をして、女子教育や幼児教育に携わってきて、そのあと、ユニセフの次のポストを探さなきゃという時、マダガスカル時代の上司のすすめもあり、GPEに応募しました。一生ユニセフと思っていたので自分でも驚きでしたが、マダガスカル時代に出張で来ていた尊敬する女性から、「ユニセフもいいけどほかの国際機関やNGOなど、違うところで経験を積むとあなたの視野が広がる」と言われて、挑戦することにしました。結局、GPEが楽しくてもうすぐ10年目になります。

高橋: GPEが途上国で活動する上で苦労したことや、GPEだからこそ発揮できる強味はありましたか。
木部崎さん: 苦労といえば、人と仕事をしていくので楽しい醍醐味でもあるのですが、自分たちでやるのではなく、アドバイスをすることによって動いてもらうので、パートナー国で教育省の人も国際機関の人もステークホルダーは日々やらないといけない仕事があり、その中で、セクターレベル(教育開発計画や国家予算の分析など)の仕事いきましょうと声を上げるのは大変なことも国によってはあります。

GPEだからこそというと、ミャンマーが何年か前にGPEのメンバー国になりましたが、GPEはエクイティ、一番助けを必要としている人に教育が何を出来るかを啓蒙しているのですが、その時ロヒンギャの問題が注目され始めていて、ミャンマーではすでに国内避難民が発生している状況でした。GPEに加盟することでミャンマー政府にとって資金を受けられるなどいい面もありますが、パートナーシップであったりロヒンギャであったり難民であったり、そういった状況がどうやって改善しているかは聞かれるので、それを啓蒙する機会になりました。最初にLEGに説明したとき、他の国際機関から、「国をベースにしているドナーからはセンシティブな話題は触れられないでいたが、GPEが来てくれて、聞いてくれることによって、それを活用して議論を進めていくことができる」と言ってもらえました。それに続くGPEのグラントミーティングで80ミリオンドルの資金からしっかりロヒンギャや少数民族に割り当てられたグラントをつくることを政府が承認してくれました。クーデターでそのプログラムの実施は難しくなってしまいましたが、うれしかった成果でしたね。GPEが外にいる大きなパートナーだからこそ、プッシュできたことだと思います。

高橋: 教育協力でパートナーシップはなぜ重要なのでしょうか?また、パートナーシップを尊重して活動する中で心がけていることがあれば、教えていただきたいです。
木部崎さん: 個人やひとつの組織でできることは限られていると思います。月並みですけどみんなの力を合わせることによって、より大きな結果により早く到達することができるようになると思います。

教育協力のエリアで考えると、幼児教育や基礎教育、中等基礎教育に重きを置いている団体もいれば、職業訓練が大事だと考える団体もありますよね。でも結局、問題とか解決策はどこかでつながっていると思うんです。たとえば、教員養成のシステムを強化したり、カリキュラムや教材を見直すといったときも、1学年とか初等教育だけを見るわけにはいかないですよね。つながっているので、全体をみて連携して、教育システムとしてどうやって改善していくのだろうかとする姿勢が大事だと思います。一つの機関でできることがかぎられていても、みんなの強みをいかして、うまく連携してサポートをすればもっと効果的になるのではないかなと。そういった面でパートナーシップは大事だなと感じます。例えば、私が担当しているある国では、大きな組織やNGOを含めると、教員の質の改善と国語・算数の教材の改善をしている団体・プログラムがいっぱいあるんですよ。でも、みんながツールやプログラムを最初から作り上げるのは、もちろんいいのですが効率的でない面もあります。こんなに多くの団体があるのに、まだ全ての子どもがカバーされていないんですね。でも、みんながツールや知見を持ち寄って、どうやったらより多くの子どもに届けることができるだろうと考えてアプローチができると思うんです。みんなの意見を持ち寄って調整することは短期的には困難なことでもありますが、中長期的にみると大きな支援につながるので、このあたりでパートナーシップはすごく大事だと思います。

私自身も、ほかのGPE事務局の職員も気を付けていることは、政府の主導権とLEGの働きを尊重して、少しずつアドバイスをすることでしょうか。ここは強化できるのではないかと思うことがあっても、こうしなさいというのではなく、どう思いますかと働きかけることが大事ですね。先ほどの例のように、似たようなプログラムが混在している状況であれば、その状況で生じた弊害はあったか、どうやったら改善できると思うかと問いかけ、問題意識を持ったもらい改善につなげてもらっています。LEGのコーディネーションがうまくいっていない場合には他国の事例も交えながら、国の状況に合わせてアドバイスをしています。

アドバイスをする時には、その国の状況がわかっていないといけません。会議や書類だけでは分からないこともたくさんあり、パートナー国のいろいろな人と信頼関係をつくることによって、LEGや教育省でおきていることを知ると、解決策がみえてきやすくなるかなと思います。

高橋: 木部崎さん、興味深いお話をありがとうございました。GPEの職員が日々経験していることを生でお聞きするのはとても貴重な機会でした。教育協力に長年携わってきた木部崎さんのお話を聞くことができ、学ぶことが多くありました。また、同じ日本人としてたくさんのインスピレーションを受けることができました。

木部崎彩さん(きべさき あや)
GPE事務局シニア・カントリー・オペレーション・オフィサー。バングラディッシュ、カンボジア、ミャンマー、ネパール、ベトナムのカントリー・リーダー。前職のユニセフではエデュケーションスペシャリストとしてブータン、マダガスカル、ネパールに勤務。シドニー大学で国際教育学の修士号、サセックス大学でジェンダーと開発の修士号を取得。

高橋真理奈(たかはし まりな)
日本でマイノリティとして育った経験を通じて、教育の力を実感する。大学卒業後はコンサルティング会社に入社。現在はNPO法人のカントリーマネージャーとして遠隔地へ映像授業を提供している。

高橋真理奈さん

インタビューを終えて
教育協力のキャリアを歩みたいと思っている私にとって、大切な姿勢をお聞きすることができたインタビューでした。教育は、一度実施したら終わりでなく届け続けること、そして、とりこぼされる人がいないことが重要です。いろいろなプログラム・団体が教育を届けていますが、それぞれの強みがいかされ、長期的に教育システムがよい方向に向かっていくためにも、パートナーシップは重要な働きをしていることを改めて認識しました。(高橋)

コメントを残す