気候変動危機が深刻であることは、ここで言うまでもありません。自然現象を相手にする気候変動の課題と、人を相手にする教育は、一見、別々に取り組む課題に思えるかもしれません。しかし、例えば私たち日本で教育を受けたものは、様々な自然災害を想定した避難訓練や、防災グッズの用意など、災害時への備えを学校で身に着けた人は、多いのではないでしょうか。
GPEでは、教育と気候変動危機は密接に連関しており、切り離せないテーマだと考えています。気候変動による自然災害によって、学校インフラの崩壊や、長期化する避難生活によって教育の断絶が起きます。一方で、教育は、災害に対処するための術を身に着け、気候変動リスクを最小限にすることにも貢献する可能性があります。この記事ではGPEが取り組む気候変動危機への取り組みについてその外観を紹介します。
2023年現在、GPEが承認している合計84件のグラントのうち、凡そ22件のプロジェクトが気候変動危機に対処するための教育支援にあてられています。また、気候変動に起因する災害によって教育が断絶された地域のために、緊急支援として供与されるグラント(アクセラレーテッド・ファンディング)が6件承認されています。これら合計28件の気候変動危機に対処するためのグラントは、総額2億8,300万ドルに上ります。
気候変動危機に対処する教育支援プロジェクトの中身としては、1) 気候変動を教育カリキュラムや教員研修の題材として取り入れることと、2) 気候変動による災害リスクを考慮した学校設備の設計・建設に取り組むこと、の2つが主要な事業内容となっています。例えばラオスでは、GPEの支援を受けて新しい教員研修プログラムが導入され、研修を受けた教員たちはその中で自然災害による緊急事態時の対処方法について身に着ける一方、地域の自然環境をどのように保全するのか、地域の自然資源をどのように管理するのかといって、自然環境に関する知識を習得しています。また、教育施設に対しては、自然災害リスクに強い設計が取り入れられるようになりました。例えば、洪水対策のための灌漑インフラの改善、水不足が深刻な地域では雨水利用やリサイクルの導入、浸食や地滑りから校区を守るための植林事業などが行われています。ソマリアでは、GPEのグラントを受け、これから新設・改修される全ての学校に、可能な限り太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入することも決まっています。
自然災害から子どもたちを守り、教育の継続を可能とするためにできることは、まだまだ沢山あるはずです。
また、これ以上急速な気候変動を招かないために、私たちにできることは何か。ドナー国、パートナー国という括りに関係なく、GPEのパートナーシップ全体で、教育を通じて私たちが取り組むべきことを、これからも考えていきます。(文責:プログラムオフィサー・近江加奈子)
