
気候危機は子どもの教育の危機である。2023年7月は「史上最も暑い31日間」でアントニオ・グテーレス国連事務総長は、「地球温暖化の時代は終わった。地球沸騰化の時代が到来した」とコメントした。気候変動は様々な状況において教育へのアクセスや質の低下を引き起こす。例えば南スーダンでは、大人の胸の高さまで洪水に見舞われる地域があり、その地域では幼稚園や小学校の就学率は非常に低い。マダガスカルではサイクロンが天井や窓を破壊するため、2023年には約15万人の子供の教育に影響があった。こうした気候変動による影響は、裕福でない家庭出身の子供や、障害を持っている子供など、脆弱な状態にある子供の方が大きいため、結果として教育の格差を広げる要因にもなる。
GPEの資金援助を得て、ユネスコ国際教育研究所、ユネスコ本部、Save the Childrenは、20か国の教育省とともに、教育セクター計画、教育予算・戦略に気候変動適応と環境持続可能性を組み込み、教育セクターの強靭性を高め、子どもたちに気候変動の時代に必要な教育を届けるプロジェクトを開始した。以下の五点が、このプロジェクトの具体的な柱になる。
・エビデンスに基づく教育政策と計画
・気候リスクに対する学校の耐性強化
・気候データを教育データベースへの統合
・各セクター間の調整と気候変動資金へのアクセス
・カリキュラム・教科教授法、および教員養成トレーニングの実施
こうした気候変動に関わる教育セクター改革は、発展途上国だけでなく日本でも必要である。日本でも局所的な豪雨、巨大化する台風、それにともなう土砂災害が毎年起こっており、これら五本の柱に代表される教育セクター改革は全世界的に新しい取り組みなので、防災・減災教育や地域を主体とした防災計画など、対外的に日本の知見や経験を提供できる現状がある一方、日本もいかに気候変動を教育カリキュラムに取り入れ、頭(知識・スキル)・心(内在化した価値)・足(実際の行動)が一致するような教育を展開するかという課題に直面している。
国際的には、気候変動と教育の分野において日本の世界的なリーダーシップが期待されており、「持続可能な開発のための教育(ESD)」、防災、環境教育などの分野で、日本が果たせる役割は非常に大きい。民間セクターやJICA、国連などの多国間援助機関、若者、政治家など、さまざまなステークホルダーを巻き込み、教育分野においても日本が世界的なリーダーシップを発揮する動きが高まっている。
今後、日本を含め世界中の子供たちが気候変動により教育を中断することがないよう、また気候変動に対処するための知識やスキルを持つ世代を育てるためにも、国際的に日本の役割は非常に重要だと考えられる。 (文責:IIEP-UNESCO 水野谷優 )
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