「2021年成果報告書」を発表。5年間の教育課題の進展と課題を振り返る

2016年から2020年までの戦略計画である「GPE 2020」の完了に伴い、「2021年成果報告書」では、「GPE 2020」の成果枠組みで設定された指標に対するパートナーシップの進捗と成果を紹介しています。

以下に成果の具体例を紹介します。

より多くの子どもたちが学ぶ

データが入手可能なパートナー国で2010年〜2015年の間に行われた学力調査と2016年〜2019年の間に行われた学力調査の結果を比較したところ、これらの国の70%において学習成果の向上が見られました。

より多くの子どもが訓練を受けた教師から指導を受ける

2015年には訓練を受けた教師1人あたりの初等教育の児童数が40人未満であるパートナー国が25%だったのに対して、2020年には39%に増加しました。

基礎教育修了率が増加し、男女格差も縮小

GPEパートナー国における男女の教育課程修了率の平均値の差は、初等教育で6.1%(2015年)から3.4%(2020年)に、前期中等教育では、9.9%(2015年)から7.2%(2020年)に減少しました。

G7外務・開発大臣会合で合意された女子教育に関する目標とGPEの取り組み

5月3日から5日にかけてロンドンにおいて行われたG7外務・開発大臣会合では、2026年までに更に4,000万人の女子を学校に通わせ、2,000万人の女子に10歳または小学校修了までに読解力を身につけるという、女子教育に関する新たな目標にG7が共同で合意しました。

G7で合意さえれた女子教育に関する目標の実現に向けてた、GPEの取り組みを紹介いたします。

GPEは、 すべての女子が質の高い教育を受けられるよう、パートナー国のジェンダー平等実現に向けて、資金援助を行っています。その一環として、女子が学校に行き学ぶ機会を変革することを目指し、2020年12月に2億5,000万米ドルの「女子教育アクセラレータ」を創設しました。

「女子教育アクセラレータ」の適格国は、2021927日現在、30カ国存在します。GPEのパートナー国における活動は「パートナーシップ・コンパクト」で示されている重点分野に沿って行われます。このコンパクトでジェンダー平等を対象としている国が適格国となります。

また、「女子教育アクセラレータ」は独立したグラントではありません。システム変革グラント(System Transformation Grant。GPE2020におけるEducation Sector Program Implementation Grant(ESPIG)がGE2025より改訂されたもの)またはマルチプライヤー (Multiplier)に追加で組み込むことができます。 「女子教育アクセラレータ」は、ジェンダー平等への効果を補完したり拡大したりすることで、これらのグラントにおける活動内容と連携して効果を発揮します。

9月15日付で、 GPE理事会議長・副議長が交代

ジャカヤ・キクウェテ氏とスーザン・リオトー氏(GPE事務局)

9月15日付で、前タンザニア連合共和国大統領のジャカヤ・キクウェテ氏がGPE理事会議長に、London School of Economics and Political Science評議会議長のスーザン・リオトー氏が理事会副議長に就任しました。

前タンザニア連合共和国大統領であったキクウェテ氏の就任は、GPEにとってパートナー国のリーダーシップと関与が重要であることを表します。キクウェテ氏は、タンザニア政府や国際機関、地域機関での卓越した公務のキャリアを通じて、教育や女性・子どもの健康のための先進的な政策の推進に尽力してきました。国際的なガバナンスと倫理の専門家であるスーザン・リオトー氏の理事会副議長への就任は、 GPEにとって、強力なガバナンスが重要であることを裏付けるものです。

これに伴い、2014年から7年間GPE理事会議長を務めたジュリア・ギラード氏と、2018年から3年間GPE理事会副議長を務めたセリネ・ムバエ・ティアム氏は、任期を終えました。両氏のリーダーシップのもと、 GPE理事会は拡大・多様化し、「世界で最も弱い立場にある子どもたちに質の高い教育を提供する」という共通のミッションのもと、関連パートナーを結集してきました。また、7月に行われた「世界教育サミット」は、 パンデミックにより教育が妨げられている世界中の何百万人もの子どもたちや若者にとって重要な成功であり、教育が復興の中心であることを確認する機会となりました。

GPEと、他の教育関連の国際機関やNGOとは何が違うの?

このコーナーではGPEに関してよくある質問にお答えします。

GPEは世界最大の教育に特化した基金でありパートナーシップです。他の機関と比べて特徴的なのが、パートナーシップといえます。パートナーシップにはグローバルなレベルと、国レベルの2つがあります。国レベルのパートナーシップの中心となるのが、右の図のように 途上国政府が主導し、現地の教育パートナー(二国間機関、多国間機関、教員団体、民間企業、財団など)によって構成される現地教育グループ(Local Education Group, LEG)です。LEGは途上国政府と対話しながら、教育セクター計画の策定、実施、モニタリング、評価などを支援します。

他の教育関連の国際機関やNGOでは、例えば学校建設や緊急下における教育支援など個別のプロジェクトなどが主な支援の対象です。一方、GPEは、途上国政府による主体的な教育システム改善のための、教育セクター計画の策定・実行を支えるLEGのパートナーシップや、教育セクター計画実現のための資金提供を含む、国際的な枠組みです。この枠組みを通して、その国の教育の質向上に包括的に貢献しているといえるのです。

世界教育サミットで、23のドナーから過去最高の40億米ドルを調達

左から ジュリア・ギラード GPE理事会議長、ウフル・ケニヤッタ ケニア共和国大統領、ボリス・ジョンソン 英国首相 (GPE/Michael Knief)

7月28日から29日まで 開催した世界教育サミット(ボリス・ジョンソン英首相とウフル・ケニヤッタ・ケニア共和国大統領がロンドンで共同開催)で、GPEは23のドナーから過去最高となる40億米ドルの資金を調達しました。このサミットの成功は、世界の低所得国における子どもたちの教育の確保に向けた国際社会のコミットメントを示しているといえます。

(ページ下の表は世界教育サミットでのドナー国からのプレッジ金額の一覧)

世界教育サミットは、ドナー国やパートナー国の首脳と閣僚、企業や民間財団の代表、国際機関、 国際開発金融機関、NGO、教師組合、若者リーダーなども、ロンドンとバーチャルで参加しました。今回の世界教育サミットではこれまでの増資会合と比べて特徴的な点が3点ありました。

1点目は、19のパートナー国の首脳が国家予算の少なくとも20%を教育に充てることを約束したことです。これはウフル・ケニヤッタ大統領が主導した教育資金に関する政治声明に基づくものです。この声明に賛同した国々による教育資金の合計は、今後5年間で1,960億米ドルにのぼります。これは、一方的に資金を提供するのではなく、途上国にも教育分野への公的支援へのコミットを求めるGPEの支援の特徴を表しているといえます。

2点目は、経済界と財団が合わせて1億米ドル以上の拠出を行なったことです。これには、Dubai Cares、LEGO財団、オープン・ソサエティ財団などが含まれます。また、官民連携の新たな2つのパートナーシップも立ち上がりました。これは民間企業のソーシャルマーケティングの専門知識を活用して女子の就学率の向上、エビデンスに基づく教育システムの改善推進のためのデータシステムの強化を目的としたものです。

3点目は、 国際開発金融機関との連携です。世界銀行、イスラム開発銀行、アフリカ開発銀行等からGPEとの連携に関する発言がありました。アジア開発銀行(ADB)は浅川総裁から、ADBの教育向けの年間支援割合を倍増し、2024年までに年間コミットメントの10%まで引き上げることや、 ブレンディド・ファイナンスを通したGPEとの連携強化を行うことに関する発言がありました。

日本からは茂木外務大臣からビデオメッセージを通して、教育分野でGPEへの支援の継続を含め、今後5年間で15億ドルを超える支援を行っていくことの表明と、G7外相会合で合意された女子教育宣言も踏まえ750万人の途上国の女子の教育及び人材育成のための支援を行うことについて約束を行いました。

GPE、世界教育サミット 「Global Education Summit」 開催 23のドナーから過去最高の40億米ドルを調達 1 憶 7,500万人の子どもたちの教育を支援します

Hydrogen Photo Shoot 2021, Los Angeles, US

世界最大の教育課題に特化した国際基金「GPE(Global Partnership for Education / 教育のためのグローバル・パートナーシップ)」(本部:ワシントンD.C. / 理事会議長:ジュリア・ギラード)は、教育支援のための世界的な資金調達会議 「Global Education Summit」 (ボリス・ジョンソン英首相、ウフル・ケニヤッタ ケニア大統領 共同開催)を、7月28日-29日に英・ロンドンで開催し、23のドナーから過去最高となる40億米ドルを調達しました。

各国の代表が「Global Education Summit」でGPEへの拠出を表明。日本は『GPEへの支援継続および今後5年間で15億ドルを超える教育分野への拠出を行う』と茂木外相が約束。

2021年7月28日、29日にロンドンで開催された、Global Education Summitでは、オンラインとオフラインで何千人もの参加者が見守る中、23のドナーから次々と、GPEへのプレッジが述べられました。多くの国や団体は、新型コロナウィルスが世界の教育に与える影響やその重要性を鑑みて、前回の増資会合よりも多くのプレッジを示しました。例えば隣国の韓国は前回から3倍に当たる金額をGPEの2021年から2025年の活動のためにプレッジしました。

質の高い教育を支える教師

7月28日、29日に開催されるGlobal Education Summitまで2週間を切りました。このサミットでは、グローバルリーダーたちがGPEに対して野心的なプレッジを行います。

この節目を前に、私たちは質の高い教育を実現するために不可欠な存在である「教師」を皆さんと一緒に祝うことができることを非常に嬉しく思います。

教師は何者にも代替できません。教師は全ての教育システムを支える存在です。GPEはパートナー国と協力して、教師をエンパワーし、彼らが資格を持ち、意欲を持ち、十分なサポートを受けられるようにすることで、教育の質を向上させることに専心しています。

教育の質は、GPEの新戦略「GPE2025」の優先分野の一つです。今後5年間、私たちはすべてのパートナー国において、質の高い教師と指導への投資を行います。これは、学校が基盤の他のどの要因よりも、教師の有効性が児童生徒の学習を予測する上で最も重要であることを認識しているからです。

教師に関する課題とGPEの成果

課題

SDG4を達成するためには、各国は2030年までに7,000万人近くの教師を新たに採用しなければならない(ユネスコ統計局)。

多くの教師は、指導に必要な知識や指導技術がない。また、教師教育や教員研修が実施されていないか、効果がないことが多く、教室の現実に立ち向かうための準備ができていない。

資金面での制約から、臨時の教師を雇うことも少なくない。教師不足は特に農村部や遠隔地で深刻で、資格のある教師を獲得し、集めて、維持することがより困難である。


政策対話に教師の声が届いていない。地域のニーズや現実を最もよく理解しているにもかかわらず、教師やその組織が意思決定のプロセスから取り残されていることがしばしばある。

GPEの成果

16年度から20年度の間に、GPEの助成金により160万人近くの教員が研修を受けた。

2020年のGPEの実施助成金の89%が、教員支援を含んでいた。

2017年に、72%の初等教育の教師の72%、65%の前期中等教育の教師がパートナー国で教員養成カリキュラムや現職研修を受けた。

2019年にGPEは2億米ドル以上を教員研修(教員の育成と管理)に投資した。

2020年のGPEの実施助成金の95%は、教員支援を含んでおり、その総額は1億7200万米ドルに上る。

訓練を受けた教師1人あたりの生徒数が40人未満のパートナー国は、2015年の25%であったが、2020年には39%であった。

2002年以降、さらに6,700万人の子どもたちが質の高い教師にアクセスできるようになった。

GPEの資金で訓練を受けた教師は、2014年は9万8千人であったが、2019年は46万5千人以上であった。

GPEが全額出資を受けた場合、どのように教師を支援するのか

50億米ドル以上の資金で、GPEは以下のことを実現します。
1億4,000万人の児童生徒が、専門的な訓練を受けた教師による指導を受けられるようにする。
社会的に疎外されたコミュニティで働く教師を含む、220万人の教師を訓練する。
78,000の新しい教室を建設する。

さらなる情報はこちらから:GPE 2021-2025 Strategic Plan | GPE Case for Investment [EN] | GPE Quality Teaching.

世界中の変革者を鼓舞する教師たち

50億ドルの5つの理由」と題したインタビューシリーズの一環として、パートナーシップに参加している25人以上の変革者たちに、学校時代について尋ねました。多くの人にとって、教師は自分の成長に大きく貢献し、今日の彼らを形成する旅の中心的な存在でした。教師は、すべての子どもたちが学校に通い、学ぶための世界的な取り組みにおいて、縁の下の力持ちです。   GPEでは、教師が発言を届け、トレーニングを行い、モチベーションを維持するための支援を行なっています。質の高い教育を求める25人以上の活動家に、教師が人生を変えるほどのインパクトを与えた思い出の一部を以下にご紹介します。

教師はあなたの人生にどのような影響を与えましたか?

“先生方は、私がファゴットを演奏したり、言語を探求したり、リーダーシップを発揮したりすることを応援してくれました。私が旅行や異文化を学ぶのが好きなのは、人文学の先生の影響もあると思います。先生方は、生徒が最高の自分になれるように挑戦し、刺激を与えてくる存在です。”

スザンヌ・エーラーズ
マララ基金CEO

最初の先生は、今でも私にとって最も重要な指導者である女性とのペアを組んでくれました。

この二人の女性は、私に教育の価値を教えてくれ、新しい未来を再構築するための扉を開いてくれました。

モハメド・シディベイ
平和活動家、GPEユースチャンピオン

最初の先生は、今でも私にとって最も重要な指導者である女性とのペアを組んでくれました。

この二人の女性は、私に教育の価値を教えてくれ、新しい未来を再構築するための扉を開いてくれました。

モハメド・シディベイ
平和活動家、GPEユースチャンピオン

“私の人生に足跡を残してくれた先生がいます。私は数学の先生と良い関係を築いていました。このおかげで私は数字や方程式が好きになり、銀行部門に参加することができました。

教育のおかげで、私は教育分野で有名な慈善団体を率いることができ、誇りに思っています。”

タリク・アル・グルグ博士
ドバイ・ケアの最高経営責任者

“私にとって最も重要な教師の一人は、彼女のクラスを批判的思考と民主主義を行使するための空間に変えました。

人生の意味、政治参加、教育の重要性についての彼女の問いかけは、解放的な教育を求める私の日々の闘いを鼓舞してくれます.”

ローラ・ジャンネッキーニ
CLADEの機関開発コーディネーター

長谷部誠氏や有森裕子氏、井本直歩子氏など著名スポーツ選手らが参加 「 Raise Your Hand 」 キャンペーンで教育支援の必要性を呼びかける

世界最大の教育課題に特化した国際基金「GPE(Global Partnership for Education / 教育のためのグローバル・パートナーシップ)」(本部:ワシントンD.C. / 理事会議長:ジュリア・ギラード)は、現在世界中で展開している「Raise Your Hand」キャンペーンに、この度日本で、長谷部 誠氏(プロサッカー選手・日本ユニセフ協会親善大使)、有森 裕子氏(オリンピック女子マラソンメダリスト)、井本 直歩子氏(オリンピアン・途上国教育支援専門家)などが参加し、日本国内においても、教育支援の必要性を強くよびかけています。

長谷部 誠 氏 メッセージ

https://twitter.com/GPE_Japan_PR/status/1415898708160376832

有森 裕子 氏 メッセージ

https://twitter.com/GPE_Japan_PR/status/1415898883071176704

井本 直歩子 氏 メッセージ

https://twitter.com/GPE_Japan_PR/status/1415899047500541952

持続可能な開発目標SDGsの1つとして、目標4「質の高い教育をみんなに」が掲げられています。GPEの「Raise Your Hand」キャンペーンは、10億人の子どもたちが暮らす最大 90 カ国の教育制度の変革の支援を行うために、2021年-2025年の期間で最低でも50億ドル(約5,400億円)の増資を目指して行われているものです。本キャンペーンは、7月28日-29日(現地時間)にロンドンで開催される、教育支援のための世界的な資金調達会議 『Global Education Summit』 (ボリス・ジョンソン英首相、ウフル・ケニヤッタ ケニア大統領共同開催)に向けて実施しています。

100か国以上、約300人の参加が予想される『Global Education Summit』 では、各国政府より今後5年間 のGPEへの拠出金額が発表されます。なお、先の G7 サミット(ロンドン)において、各国より GPE への拠出金額が続々と表明されています。日本政府は G7 の中でもアジアを代表する経済大国として期待をされていますが、これまで GPE への拠出が全体の0.46%と極めて低く、今回の『Global Education Summit』では日本の拠出金額に世界から注目が集まります。

『Global Education Summit』 は、LIVE 配信(無料)をオンラインでご覧いただけます。なお、会場には世界各国からGPEのユース達も集まります。日本からは、大竹日和奈さん(国際基督教大学)が、日本代表のGPE Youth Ambassador Japanとして参加します。視聴方法や登録につきましては、下記ページよりご確認ください。

https://www.globalpartnership.org/financing-2025/summit (英語)

<ご参考>

GPEが展開するグルーバルキャンペーン「Raise Your Hand」には、各国のスポーツ選手やアーティスト、文化人、政治家、セレブリティが参加し、世界中のリーダーにGPEへの支援を呼びかけています。

ミシェル・オバマ氏

ディディエ・ドログバ(元プロサッカー選手・コートジボワール代表)

エリウド・キプチョゲ氏 (リオデジャネイロオリンピック金メダリスト、マラソン世界記録保持者)

GPE Logo

教育のためのグローバル・パートナーシップ「Global Partnership for Education(GPE) 」は、2002年に世界銀行が主導して、設立された世界で唯一の教育課題に特化した国際基金です。すべての子どもたち に、公平で質の高い教育を提供することを目指しています。
また、途上国、支援援助国、民間企業、各国政府や、国連機関、NGOなどによるパートナーシップであり、世界中から教育のための資金を調達し、90の低所得国とともに教育制度の改善・強化を図り、彼らが直面する教育の最重要課題を解決できるように支援を行っています。GPEはSDGs の目標4「質の高い教育をみんなに」の達成を目指しています。

50億円の5つの理由:戸田敦子氏へのインタビュー

GPEは戸田敦子氏に「教育の力」について5つの質問をしました。GPEの資金調達キャンペーンでは、90の国と地域で最大10億人の子どもたちの教育を変革するために、少なくとも50億ドルの資金調達を目指しています。

アフリカ開発銀行の農業、人材及び社会開発担当副総裁代行戸田敦子氏(写真:GPE事務局)