GPE用語:女子教育アクセラレータ(Girls’ Education Accelerator)

女子教育が主な課題として認識されている国や地域において、ジェンダー平等を支援するためのリソースの仕組み。
2020年12月にGPEは2億5,000万米ドルの「女子教育アクセラレータ」を創設しました。現在30ヶ国で女児が学校に通い学ぶ機会を支援し、変革につなげています。

気候変動危機と教育のつながりについて考えよう

気候変動危機が深刻であることは、ここで言うまでもありません。自然現象を相手にする気候変動の課題と、人を相手にする教育は、一見、別々に取り組む課題に思えるかもしれません。しかし、例えば私たち日本で教育を受けたものは、様々な自然災害を想定した避難訓練や、防災グッズの用意など、災害時への備えを学校で身に着けた人は、多いのではないでしょうか。

GPEでは、教育と気候変動危機は密接に連関しており、切り離せないテーマだと考えています。気候変動による自然災害によって、学校インフラの崩壊や、長期化する避難生活によって教育の断絶が起きます。一方で、教育は、災害に対処するための術を身に着け、気候変動リスクを最小限にすることにも貢献する可能性があります。この記事ではGPEが取り組む気候変動危機への取り組みについてその外観を紹介します。

2023年現在、GPEが承認している合計84件のグラントのうち、凡そ22件のプロジェクトが気候変動危機に対処するための教育支援にあてられています。また、気候変動に起因する災害によって教育が断絶された地域のために、緊急支援として供与されるグラント(アクセラレーテッド・ファンディング)が6件承認されています。これら合計28件の気候変動危機に対処するためのグラントは、総額2億8,300万ドルに上ります。

気候変動危機に対処する教育支援プロジェクトの中身としては、1) 気候変動を教育カリキュラムや教員研修の題材として取り入れることと、2) 気候変動による災害リスクを考慮した学校設備の設計・建設に取り組むこと、の2つが主要な事業内容となっています。例えばラオスでは、GPEの支援を受けて新しい教員研修プログラムが導入され、研修を受けた教員たちはその中で自然災害による緊急事態時の対処方法について身に着ける一方、地域の自然環境をどのように保全するのか、地域の自然資源をどのように管理するのかといって、自然環境に関する知識を習得しています。また、教育施設に対しては、自然災害リスクに強い設計が取り入れられるようになりました。例えば、洪水対策のための灌漑インフラの改善、水不足が深刻な地域では雨水利用やリサイクルの導入、浸食や地滑りから校区を守るための植林事業などが行われています。ソマリアでは、GPEのグラントを受け、これから新設・改修される全ての学校に、可能な限り太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入することも決まっています。

自然災害から子どもたちを守り、教育の継続を可能とするためにできることは、まだまだ沢山あるはずです。

また、これ以上急速な気候変動を招かないために、私たちにできることは何か。ドナー国、パートナー国という括りに関係なく、GPEのパートナーシップ全体で、教育を通じて私たちが取り組むべきことを、これからも考えていきます。(文責:プログラムオフィサー・近江加奈子)

近江加奈子

GPEユースと小森卓郎議員を訪問

小森卓郎議員訪問
ユースの話を熱心に聴く小森卓郎議員

小森卓郎議員を訪問しました。
GPEユースの高橋さんは、フィリピンでの教育現場の話に触れながら、現地の人々が如何に日本の協力、知見共有に期待しているのか述べ、国際教育協力分野への更なる支援の必要を訴えました。

小森議員、お忙しい中お時間をいただき、親身に話を聞いていただき有難うございました!

マルチプライヤーを活用したJICAとの取り組みがGPEのブログ(英語版)に掲載されました


強力なパートナーシップは、教育を変革するGPEの活動の中核とな
っています。
マルチプライヤーを通じて、JICA とGPEはパートナーシップを深め、
日本の知識を活用して、パートナー国での教育の前進、学習危機
対策に取り組んでいます。パプアニューギニアとパキスタンでの活
動の模様がGPEのホームページ(英語)で紹介されましています。
こちらをご覧ください。

GPEユースの活動から得たもの:OGからのコメント

GPEでは現在約20ヶ国でおよそ40名のユースリーダー達が活躍しています。ユースリーダー達は、世界の教育の課題や開発について情熱を持つ18歳から30歳のメンバーで、ボランティアとしてGPEの活動に関わっています。​

今回は昨年ユースリーダーとして活動していたOGの中野友絵さんに当時のことを振り返ってもらいました。

中野さん

まずは中野さんの自己紹介からです。
中野「中学生ぐらいから貧困や格差に興味があり、高校の総合的な学習の時間に政府開発援助を研究していました。その経験から開発経済学・計量経済学を学びたいと思い、大学で経済学を専攻。在学中にトビタテ!留学JAPANに支援を頂き、イギリス留学、ガーナでのインターンシップを経験しました。その後は、教育経済学修士号取得。日本の通信事業会社に約4年間勤務した後、国連広報センターで広報インターンを経験。現在は国連人口基金のスリランカ事務所にてHumanitarian Project Officer(国連ボランティア)として勤務しています」

・昨年1年間、ユースとしてどんな活動をしましたか?また、活動を通して学んだことを教えてください。
中野「昨年、私はGPEユースとして、日本の国会議員の先生方に対してGPEを通じたパートナー国への教育支援の必要性を訴えるアドボカシー活動を行っておりました。当初はこんな私の声なんて聞いてもらえるのだろうかと不安しかありませんでした。しかし、時間を作って面談の機会をくださったほとんどの先生方が、真摯に若者の声に耳を傾けてくださいました。
この活動を通じて、声を上げることの大切さを学びました。また教育に情熱を持つ数多くの人々と出会い、一緒に活動できたことは私にとって生涯にわたる財産です。周りの方々から受ける日々の刺激、今何をすべきか、どうすれば最大限のインパクトを出せるのかといった問いに自ら真剣に考えることのできる環境が自分は好きなのだと気づけたことが、大きな学びだったと思います。」

・GPEユースの活動を今後自身のキャリアにどう生かしていきたいですか?
中野「将来的にはパートナー国の教育の質向上に貢献するため、エビデンスに基づく教育政策立案など領域での専門的なキャリアを追求したいと思っています。ただ今は誰も取り残されず、すべての人が自分らしくいられる世界を作っていけるように目の前のチャンスには全力でチャレンジしていきたいと思っています。
ただ実は既にユースの経験は今の新しいキャリアに十分生きていると感じております。例えば、今の業務の中でConcept Noteを書く機会を頂いていますが、これに初めて挑戦したのはGPEユースの時でした。また、GPEユースとしての活動は、グローバルな視野を養う機会でもありました。この経験は、国境を越えた協力と対話を通じて問題解決を試みるグローバルな環境で活躍するための基礎となったと思います。」

GPE用語:グラントエージェント

GPE資金の管理・執行を担う資金運用機関のこと。
政府や他のパートナーと緊密に協力して、資金プログラムが教育セクター全体の計画や政策、制度と整合しているか、適切に設計されているかなど確認しています。グラントエージェントになるには、財務管理や組織能力などいくつかの基準を満たす必要があります。その上で、現地の政府によって選ばれます。

GPE採用情報(7月28日~8月31日締切)

現在、GPEでは下記のポストの採用を行っています。ご応募お待ちしております。

イベントアシスタント:7月28日締切
シニアチェンジマネージメントスペシャリスト:8月4日締切
コミュニケーションコンサルタント:8月4日締切
イノベーティブファイナンスリード:8月11日締切
シニアアドバイザー(スウェーデン):8月27日締切
シニアアドバイザー(デンマーク):8月27日締切
シニアアドバイザー(ノルウェー):8月27日締切
カントリーエンゲージメント&ポリシーチーム:8月31日締切

GPE用語解説:Coordinating Agency (CA, コーディネーションエージェンシー)

パプアニューギニアの小学校
出典:GPE/Jeff Ramin

GPEの多様なステークホルダーが構成する現地教育グループ(LEG: Local Education Group)を取り纏める調整機関のこと。

パートナーシップのファシリテーターとして、GPEのビジョンやミッション、目標を達成するために重要な役割を担っています。日本関係では、在モンゴル日本国大使館がモンゴルにおけるCAとして、また、JICAはパプアニューギニアでCAとして他機関との調整役を担っています。

GPEの資金供与の仕組みを通じた自助努力の促進:ウガンダの事例

ウガンダの小学校の外で児童たち
出典:GPE/Livia Barton

2022年9月に行われたGPEの理事会で、ウガンダ教育省に対する追加の資金供与が承認されました。
この追加資金供与は、ウガンダ教育省からプロポーサルを受けるも、一度は保留にされていたものでした。どのような理由で保留となった後、資金供与が承認されたのでしょうか。

GPEはパートナー国のオーナーシップの下に資金供与を行うことを重要理念として掲げています。そのため、パートナー国政府自身が教育の重要性を認識し、教育環境の改善のために尽くすコミットメントがあることが、GPEの資金を受ける際の条件です。このことは、パートナー国の自助努力を促すという意味に加えて、ドナー国など資金の拠出元に対するアカウンタビリティを確保するという意味でも重要です。

それでは、実際どのようにパートナー国の教育に対する「コミットメント」を測っているのでしょうか。
今回はウガンダの事例を紹介します。国が抱える歴史背景や時々の国際情勢によって各国の財政状況は大きく異なるので、一概には言えませんが、一つの指針としてGPEが掲げているのは、途上国政府が国内予算の20%程度以上を教育予算に充当することがあります。ウガンダ教育省がGPEに対して追加の資金供与を要請した際、当初はウガンダ国内予算の内、教育に充てられた予算が全体の17%しか占めていなかったため、追加資金供与については決定が保留され、GPEの理事会の承認が下りませんでした。
この理事会での決定を受けて、ウガンダ政府は国内予算の見直しを行い、教育に充てる予算を19%に引き上げました。予算をこれだけ増額するというのは、一つの「コミットメント」の現われであると考えられます。ウガンダ政府側の予算見直しを受け、GPE理事会で保留していた追加の資金供与が承認されました。

このウガンダの例は、国内予算編成により教育へのコミットメントが示されたわかりやすい例です。
こうした仕組みを通じてコミットメントを促すことは、教育予算の拡充につながり、当該国において教育の重要性が高まるという波及効果も期待されます。一方、昨今の厳しい国際情勢も踏まえて、最近は20%程度の教育予算を充てるという条件に限らず、他の条件も検討されています(例えば教員の採用人数を増やすこと、など)。

GPEの特徴は単なる基金ではなく、パートナーシップ基金であることです。ドナーから調達した貴重な資金を、効果的に、効率的に使うことと、厳しい状況に置かれた途上国の実情を把握しながら、パートナー国のオーナーシップの下に資金供与することの両輪をマネージするのが、GPE事務局の重要な仕事です。