GPEユースリーダー達による、 遠藤彰氏(在シリア日本国大使館シリア臨時代理大使兼シリア特別調整官)へのインタビュー

GPEのユースリーダー達は、在シリア日本国大使館の遠藤彰シリア臨時代理大使兼シリア特別調整官へのインタビューを実施し、脆弱な紛争国の子どもたちを支援する日本の取り組みや教育に対する政府開発援助(ODA)政策について伺いました。

日本は最近、GPEに850万ドルの拠出を表明しました。その資金の大半は紛争中の国々にあてられ、620万米ドルはイエメンに、160米万ドルはシリアの支援に用いられる予定です。 残りの約70万米ドルはGPE基金として用いられ、各国の教育セクター計画の策定・実施の支援に役立てられます。

日本によるプレッジをより詳しく知るために、GPEのユースリーダー2名が、在シリア日本国大使館シリア臨時代理大使兼シリア特別調整官の遠藤彰氏に、脆弱な紛争国の子どもたちを支援する日本の取り組みや、教育に対する政府開発援助(ODA)政策についてインタビューしました。

参加者紹介

Ayesha Farahさん:イギリス系ソマリア人。グローバル教育の熱烈な支持者であり、若者の参加の力による変革に尽力しています。

中野友絵さん:日本人。すべての人にとって質の高い教育が不可欠であると固く信じており、特に幼児教育に関心を持っています。

遠藤彰氏:在シリア日本国大使館シリア特別調整官兼臨時代理大使。

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Ayesha Farahさん:日本がG8を主催した2008年には、「万人のための教育-ファスト・トラック・イニシアティブ(EFA-FTI、GPEの前身)」という重要なドナーとの会議も開催されました。2023年に開催されるG7サミットで、日本がSDGs4についてどのようなことを予定されているのですか?

遠藤彰氏 :ご指摘の通り、日本は過去のG7/G8議長国において、教育分野での取り組みを行ってきました。例えば、G7伊勢志摩サミットでは、女子教育の重要性に光を当てました。来年のG7サミットでは、これまでのG7の成果や今年のドイツ議長国としての優先事項を踏まえ、どのような成果が得られるか検討したいと思います。

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Ayesha Farahさん:シリアの子どもたちが教育で直面している課題と、それに取り組む日本の優先順位について教えてください。また、GPEのシリア支援に期待することは何ですか?

遠藤彰氏: 2011年にシリア危機が勃発して以来、2022年はシリア・アラブ共和国での紛争は11年目を迎えます。家族やコミュニティは、暴力、移住、社会経済的な困窮、パンデミックによる健康被害、トラウマを経験し続けています。

UNOCHAは2020年に、国内では、避難生活、敵対行為にさらされること、基本的な商品やサービスへのアクセスが制限されることによる脆弱性から、その年に470万人の子どもを含む1110万人以上が人道支援を必要とするだろうと述べています。

紛争は、SDG4達成に向けた進捗を妨げています。シリア危機以前は、ほぼすべての子どもたちが初等教育に就学しており、中等教育の就学率は76%でした。紛争の悪化により、特に弱い立場にある多くの子どもたちが学校に通えていません。

日本はシリアと長年にわたり関係を築いてきました。2012年以降、日本は国際機関を通じて、シリアとその周辺国に32億米ドル以上の緊急・人道支援を提供してきました。日本は、シリアにおける人道支援へのアクセスを強化するために、国際社会と緊密な連携を続けていきます。

シリアへのプレッジは、困難に直面しているすべてのシリア人に人道支援を届けるという、日本の揺るぎないコミットメントの一環です。日本は、GPEがシリアのすべての子どもたちが質の高い教育を受けられるように支援することを期待します。

2014年6月2日、レバノン・ベイルートのBourjhammoud Public School #2で、数学の授業中に学校の先生であるMerna Faddoul(中央上)の話を聞くシリア難民の学生たち。(Credit: Dominic Chavez/World Bank)

中野友絵さん:日本の教育に対するODA政策「平和と成長のための学びの戦略」に大変興味を持っています。国際社会が「教育の変革」に向かっている今、日本の教育に関するODA戦略も見直すべきとお考えですか?

遠藤彰氏:「平和と成長のための学びの戦略」は、2015年9月の国連サミットでSDGsが採択されたことを機に、日本が発表した教育分野における国際協力に関する政策的な方向性です。

この方針では、相互学習による質の高い教育をビジョンとして掲げ、次の3つの指針を掲げています。(1)包括的で公平かつ質の高い学習を実現するための教育協力、(2)産業・科学技術人材の育成と持続可能な社会経済発展のための教育協力、(3)教育協力のための国際・地域ネットワークの構築と拡大。

現在、この方針に対する外部評価が行われており、評価の勧告に基づいてこの方針が改訂される予定です。

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中野友絵さん:日本はODAの中で、人間の安全保障の推進を優先していると聞いています。特に脆弱な国や紛争国において、子どもたちが直面する課題を克服するために、日本はどのような戦略をとっているのでしょうか。

遠藤彰氏: 日本の開発協力大綱では、人間の安全保障の推進を優先しており、これは日本の開発協力の根幹にある原則です。この原則に基づき、日本は子どもや女性、障害者といった社会的弱者の支援に力を入れてきました。

また、人間の安全保障を推進するために、日本は開発協力大綱において脆弱な紛争国を支援する方法として平和構築を優先し、紛争から復興・開発までのあらゆる段階において、子どもを含む個人の保護とエンパワーメントのための努力を強調してきた。

実際、国際社会による平和構築への支援額は2018年には51億7500万ドルで、ODA全体の約2.5%を占めています。これは、平和構築への援助額においては、他の国の中でも8番目に大きな額です。

日本がGPEに対してシリアとイエメンの教育プログラムを支援することを約束したことは、GPEの開発協力大綱に沿ったものです。日本政府は、シリアとイエメンの子どもたちの継続的な教育支援に貢献できることを喜ばしく思います。

聴覚障害者福祉リハビリテーション協会で、聴覚障害のある生徒と向き合う先生。開発社会基金は、教師への研修や機材の提供を通じて、同センターを支援しています。イエメン共和国(Credit:Dana Smillie / 世界銀行)

Ayesha Farahさんと中野友絵さん:日本は最近GPEへのプレッジを表明しました。日本の教育支援へのコミットメントについてさらに詳しく教えてください。

遠藤彰氏:日本は今年、GPEに合計850万ドルを拠出することを表明しました。620万ドルはイエメン、160万ドルはシリアに、残りはGPE基金が各国の教育セクター計画の策定・実施の支援に役立てられる予定です。

日本は、最も弱い立場にある恵まれない子どもたちの教育支援を重視しており、今後も国際社会と連携し、SDG4達成に向けた支援を強化していきます。

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インタビューでは、遠藤氏から国際平和と安全保障への関心と情熱から、外交官を目指した経緯についてお話しいただきました。

また、遠藤氏は2人のユースリーダー達に、なぜ人道支援に情熱を注ぐのかを尋ねました。これに対し、Ayesha Farahさんは、家族が英国に移住する前、ソマリアで危険な目に遭い苦しむ子どもたちを目の当たりにし、自分もその一人だったかもしれないと思った経験を語りました。

また、教師になるか人道支援に携わるのかのキャリア選択の際には、19歳のときにタンザニアで幼児教育に携わった経験から、教師になる以外にも多くの子どもたちを学校に通わせる方法があることに気づいたことを紹介しました。

また、中野友絵さんさんは、質問に対して「日本は戦争から復興したのだから、脆弱な国や紛争の影響を受けている国を支援するために、日本ができることはたくさんあると感じている」と答えました。

インタビューの最後に、2人のユースリーダー達は遠藤氏に感謝の意を表し、日本が国際社会の一員として教育の質の向上に貢献できるよう、今後も歩みを続けることを期待することを述べました。

英語の原文:GPE Youth Leaders’ Interview with Mr. Akira Endo, Special Coordinator for Syria and Chargés d’Affaires ad interim, the Embassy of Japan in Syria

日本政府、「教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)」に800万米ドル超の拠出を表明(プレスリリース)

イエメン。サヌアのカルディ校で学年末試験を受ける生徒たち。(Credit: Bill Lyons/ World Bank)

2022年1月24日ワシントンD.C.

教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)は本日、日本からの約850万米ドルのプレッジに感謝の意を表しました。

「この資金は、特に紛争の影響を受けている最も弱い立場にある子どもたちを支援するものです。」とアリス・オルブライトGPE最高執行責任者は述べています。「日本が引き続き世界の教育に関与し、すべての子どもたちが学ぶことができるよう支援することを期待しています。」

資金の大半は紛争中の国々に割り当てられ、約620万米ドルがイエメン、約160万米ドルがシリアの支援に用いられる予定です。これらの資金は、現在進行中の紛争、暴力、食糧不足により生活に深い影響を受けている最も脆弱な立場にある子どもたちの、継続的な教育支援に役立てられます。

残りの約70万米ドルはGPE基金として用いられ、各国が教育セクター計画を策定・実施することを支援する予定です。今年のプレッジは、2021年の日本のプレッジである720万米ドルを上回るものです。

「我が国は、紛争影響国の子ども等、最も脆弱で不利な立場に置かれた人々への教育支援を喫緊の課題として重視しており、今般のイエメン、シリアの教育支援を含むGPEへの拠出により、これら厳しい状況にある子供たちの教育へのアクセスが維持されることに貢献したいと心から願う。」と塚田玉樹在米国日本国大使館特命全権公使は述べています。「日本は引き続き国際社会と連携し、SDG4「質の高い教育を皆に」の達成に向け、教育分野の支援を強化していく。」

このプレッジは、第4回教育の国際デーに行われました。教育の国際デーは、国際社会にとって、教育が平和と発展のために果たす役割を称え、すべての子どもたちが質の高い教育を受けられるようにするための重要な機会です。

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ご参考

2021年7月にロンドンで開催されたボリス・ジョンソン英国首相とウフル・ケニヤッタケニア共和国大統領の共同開催による世界教育サミットでは、GPEのために過去最高の40億米ドルの拠出がドナーから行われました。2025年までに最大1億7,500万人の子どもたちが学び、さらに8,800万人の少女と少年が学校に通うことができるよう、GPEは少なくとも50億米ドルという目標達成に向けて更に歩みを続けてまいります。

教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)について

GPEは、世界の学習危機を終わらせるための共通のコミットメントです。GPEはパートナーと資金を動員し、76の低所得国が教育システムを変革し、すべての少女と少年がその潜在能力を最大限に引き出し、より良い世界の構築に貢献するために必要な質の高い教育を受けられるよう支援しています。www.globalpartnership.org

本件及び取材等に関するお問い合わせ先

Tamara Kummer(GPEメディア部門責任者) tkummer@globalpartnership.org, + 33 7 82 26 07 18

英語のプレスリリースはこちらをご覧ください。

GPE、世界教育サミット 「Global Education Summit」 開催 23のドナーから過去最高の40億米ドルを調達 1 憶 7,500万人の子どもたちの教育を支援します

Hydrogen Photo Shoot 2021, Los Angeles, US

世界最大の教育課題に特化した国際基金「GPE(Global Partnership for Education / 教育のためのグローバル・パートナーシップ)」(本部:ワシントンD.C. / 理事会議長:ジュリア・ギラード)は、教育支援のための世界的な資金調達会議 「Global Education Summit」 (ボリス・ジョンソン英首相、ウフル・ケニヤッタ ケニア大統領 共同開催)を、7月28日-29日に英・ロンドンで開催し、23のドナーから過去最高となる40億米ドルを調達しました。

各国の代表が「Global Education Summit」でGPEへの拠出を表明。日本は『GPEへの支援継続および今後5年間で15億ドルを超える教育分野への拠出を行う』と茂木外相が約束。

2021年7月28日、29日にロンドンで開催された、Global Education Summitでは、オンラインとオフラインで何千人もの参加者が見守る中、23のドナーから次々と、GPEへのプレッジが述べられました。多くの国や団体は、新型コロナウィルスが世界の教育に与える影響やその重要性を鑑みて、前回の増資会合よりも多くのプレッジを示しました。例えば隣国の韓国は前回から3倍に当たる金額をGPEの2021年から2025年の活動のためにプレッジしました。

長谷部誠氏や有森裕子氏、井本直歩子氏など著名スポーツ選手らが参加 「 Raise Your Hand 」 キャンペーンで教育支援の必要性を呼びかける

世界最大の教育課題に特化した国際基金「GPE(Global Partnership for Education / 教育のためのグローバル・パートナーシップ)」(本部:ワシントンD.C. / 理事会議長:ジュリア・ギラード)は、現在世界中で展開している「Raise Your Hand」キャンペーンに、この度日本で、長谷部 誠氏(プロサッカー選手・日本ユニセフ協会親善大使)、有森 裕子氏(オリンピック女子マラソンメダリスト)、井本 直歩子氏(オリンピアン・途上国教育支援専門家)などが参加し、日本国内においても、教育支援の必要性を強くよびかけています。

長谷部 誠 氏 メッセージ

https://twitter.com/GPE_Japan_PR/status/1415898708160376832

有森 裕子 氏 メッセージ

https://twitter.com/GPE_Japan_PR/status/1415898883071176704

井本 直歩子 氏 メッセージ

https://twitter.com/GPE_Japan_PR/status/1415899047500541952

持続可能な開発目標SDGsの1つとして、目標4「質の高い教育をみんなに」が掲げられています。GPEの「Raise Your Hand」キャンペーンは、10億人の子どもたちが暮らす最大 90 カ国の教育制度の変革の支援を行うために、2021年-2025年の期間で最低でも50億ドル(約5,400億円)の増資を目指して行われているものです。本キャンペーンは、7月28日-29日(現地時間)にロンドンで開催される、教育支援のための世界的な資金調達会議 『Global Education Summit』 (ボリス・ジョンソン英首相、ウフル・ケニヤッタ ケニア大統領共同開催)に向けて実施しています。

100か国以上、約300人の参加が予想される『Global Education Summit』 では、各国政府より今後5年間 のGPEへの拠出金額が発表されます。なお、先の G7 サミット(ロンドン)において、各国より GPE への拠出金額が続々と表明されています。日本政府は G7 の中でもアジアを代表する経済大国として期待をされていますが、これまで GPE への拠出が全体の0.46%と極めて低く、今回の『Global Education Summit』では日本の拠出金額に世界から注目が集まります。

『Global Education Summit』 は、LIVE 配信(無料)をオンラインでご覧いただけます。なお、会場には世界各国からGPEのユース達も集まります。日本からは、大竹日和奈さん(国際基督教大学)が、日本代表のGPE Youth Ambassador Japanとして参加します。視聴方法や登録につきましては、下記ページよりご確認ください。

https://www.globalpartnership.org/financing-2025/summit (英語)

<ご参考>

GPEが展開するグルーバルキャンペーン「Raise Your Hand」には、各国のスポーツ選手やアーティスト、文化人、政治家、セレブリティが参加し、世界中のリーダーにGPEへの支援を呼びかけています。

ミシェル・オバマ氏

ディディエ・ドログバ(元プロサッカー選手・コートジボワール代表)

エリウド・キプチョゲ氏 (リオデジャネイロオリンピック金メダリスト、マラソン世界記録保持者)

GPE Logo

教育のためのグローバル・パートナーシップ「Global Partnership for Education(GPE) 」は、2002年に世界銀行が主導して、設立された世界で唯一の教育課題に特化した国際基金です。すべての子どもたち に、公平で質の高い教育を提供することを目指しています。
また、途上国、支援援助国、民間企業、各国政府や、国連機関、NGOなどによるパートナーシップであり、世界中から教育のための資金を調達し、90の低所得国とともに教育制度の改善・強化を図り、彼らが直面する教育の最重要課題を解決できるように支援を行っています。GPEはSDGs の目標4「質の高い教育をみんなに」の達成を目指しています。

G7首脳が共同でGPEに少なくとも27.5億ドルの拠出を発表

英国のカービスベイで開催された3日間のサミット終了後、G7首脳は最優先事項に関するコミュニケを発表しました。その中で、教育は「変化し続ける世界で成功するための基盤」であると認識しました。

コミュニケでは、G7諸国が「最大の疑問に答え、最大の課題を克服するために、民主主義、自由、平等、法の支配、人権の尊重の力を活用する。G7は、個人を尊重し、平等、特にジェンダー平等を促進することを通してこれを実行する。これには、4000万人以上の女子が、学校教育を受けられるようという目標を支持し、教育のためのグローバル・パートナーシップに少なくとも27億5千万ドルを拠出することが含まれる。」と記述されている。 

7月の世界教育サミットに向けて、英国、ケニア、GPEが学校訪問を実施 | 「世界的な教育危機」と「女子教育」の各国支援に関するG7の新しい目標を再確認

世界で唯一の教育課題に特化した国際基金「GPE(Global Partnership for Education / 教育のためのグローバル・パートナーシップ)」(本部:ワシントンD.C. / 理事会議長:ジュリア・ギラード)は、7月28日-29日(現地時間)にロンドンで開催される、世界教育サミット 『Global Education Summit』に向けて、ボリス・ジョンソン英国首相とジュリア・ギラードGPE理事会議長が英国の教室を訪問し、ナイロビの学校を訪問していたケニアのウフル・ケニヤッタ大統領と交流するイベントを実施しました。

サッカーの世界的スーパースター、ディディエ・ドログバ氏がGPE の 『Raise Your Hand』 キャンペーンに登場

教育への支援を世界各国のリーダーに呼びかけ

世界で唯一の教育課題に特化した国際基金「GPE(Global Partnership for Education / 教育のためのグローバル・パートナーシップ)」(本部:ワシントンD.C. / 理事会議長:ジュリア・ギラード)は、現在世界中で展開している『Raise Your Hand ~手をぴんと挙げよう~』キャンペーンに、世界的スーパースターのディディエ・ドログバ氏(元サッカー・コートジボワール代表)が登場し、あらためて世界中のリーダーに向けて教育への支援を呼びかけています。