ウェビナー「KIXハブ拡大に関するお知らせ」

10月下旬から11月上旬にかけて、東欧、中東・北アフリカ、アジア・太平洋(KIX EMAP)のKIX地域ハブが、4つの小地域(サブリージョン)での発表会を開催。各所の関連する変化、ベースラインの調査結果、そのサブリージョンに属する国々の今後の活動スケジュールを共有します。

参加は無料。事前登録が必要ですが、どなたでもご参加いただけます。詳しくはこちらをご覧ください。

ウクライナの教育: GPE、グーグル、マイクロソフトが約70億円の助成金と物資の支援を発表

戦争が続くウクライナで教育に深刻な影響が出ている中、教育のためのグローバルパートナーシップ(GPE)、グーグル、マイクロソフト、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、紛争の影響を受けた地域の子どもたちへの遠隔学習や心理社会的支援に5100万米ドル以上、日本円で69億円超を支援します。発表原文

このプログラムは、ウクライナのユネスコと国際連合児童基金(ユニセフ)が教育科学省と連携して展開するものです。子どもたちと教師に、遠隔学習、心理社会的支援、教員研修、教育セクター計画などのための機器やツールを提供する予定です。

GPEのマルチプライヤーを通じて、GPEは、マイクロソフト、グーグル、ユネスコからの現金および現物支援で合計2500万ドル(約34億円)以上、ウクライナへの教育支援で合計5100万ドル(約70億円)以上のマッチングを行いました。 (GPEのマルチプライヤー:資金調達手段の1つ。国の優先事項に沿った教育プログラムに新たな資金源を活用することを目的としている。)

マイクロソフトの支援には、民間のパートナーおよびユネスコからの現金での寄付に加えて、生徒や教師がオンライン/オフラインで使用できる同社のソフトウェアへの無償アクセス、ソフトウェアプログラムに関する教師のトレーニングが含まれます。

グーグルの支援には、5万台のChromebookの寄贈が含まれています。これは、民間セクターのパートナーが、現金と物資の寄付を組み合わせて、GPEのマルチプライヤーの資金を引き出すために必要な共同資金を提供した初めての例です。

これらの寄付は、ウクライナの教育・学習の継続と教育システムのデジタル化のための既存の取り組みを促進し、緊急対応と紛争の影響に耐えるための長期的な支援の架け橋となります。

ユネスコが実施するプログラムでは、教師の専門能力開発、精神的健康と心理社会的支援、教育計画と管理、さらに国内避難民の子どもたちを含む紛争の影響を受けた初等・中等教育段階の学習者への機器の調達と配布が行われる予定です。6,800人の子どもたちと、政府関係者、校長、学校心理学者、教師、両親、介護者などの6万人以上の教育関係者が、このプログラムの恩恵を受けることになります。

ユニセフが実施するプログラムでは、端末や接続環境の提供、デジタル学習センターの拡大、遅れを取り戻すための教育の提供、教材へのアクセスに重点を置き、戦闘が最も激しいウクライナ南部と東部の推定35万人の子どもたちが恩恵を受ける予定です。フィンランドは、ウクライナ全土におけるGPEの支援を調整する「コーディネートエージェンシー」の役割を担っています。

ウクライナ教育科学省コメント:

“教育のためのグローバル・パートナーシップ “は、ウクライナで教育の継続を支援するために、ハイテク企業と主要な人道支援団体を見事に結びつけました。資金調整のおかげで、私たちは今、最も脆弱で不利な立場にある少女や少年をターゲットにし、さまざまな学習様式やツールへのアクセスを提供するとともに、彼らのウェルビーイングを向上させることができます。 私たちの包括的かつ全体的なアプローチは、GPE、ユネスコ、ユニセフ、グーグル、マイクロソフトの総力を結集した結果です。私たちは、世界の教育界に優れた模範を示したパートナーを称賛します。

GPEラウラ・フリジェンティCEOコメント:

マイクロソフトとグーグルの貢献は、ウクライナのような激しい紛争に見舞われた国を含め、教育を変革するために民間パートナーが果たす重要な役割を明確に示しています。 GPEは、すべての子どもたちが12年間の質の高い教育を受け、地域社会に有意義に貢献できるよう、パートナーと共に新たな資金源の獲得に取り組んでいきます。

戦争が教育と子どもたちに与える影響に関する数字(ユニセフ)

・2023年2月現在、ウクライナでの戦争により、1,300人以上の子どもたちが死傷しています。

・3,000以上の教育機関が爆撃や砲撃によって被害を受け、420以上が完全に破壊されました。

・小学校の生徒を通信教育でカバーしていると回答した教師は、村では31%、都市では56%に過ぎません。

ウクライナ北部の破壊された学校の体育館にて、8年生の生徒
出典:GPE/Dmytro Maksymenko

Friends of Education特別セッションを開催しました

3月8日午後には、同時期に来日していた教育基金「Education Cannot Wait」(略称:ECW、日本語名「教育を後回しにはできない」)と合同で、国際教育協力勉強会 Friends of Educationの「特別セッション:GPE•ECWトップとの対話~G7広島において教育大国•日本のプレゼンスを高めるには~」を開催しました。国会議員や政府関係者、教育関係者の皆様にご参加いただきました。また、フィンランド政府にゲストとして登壇して頂き、ウクライナでの教育支援の経験談を共有いただきました。

開催目的

1)緊急時及び長期化する危機下の教育支援現場において、GPEとECWの協働の状況について参加者の理解を深める。

2)この二機関への支援や連携を行っている先進国による現場での協働事例について学ぶ。

3)日本としてどのような戦略的連携が出来るのか参加者とともに議論を深める。

特別セッション 議題

1)初めの言葉:JNNE(教育協力NGOネットワーク)柴田哲子

2)ご挨拶:公明党代表 山口那津男議員

3)キーノートスピーチ ラウラ・フリジェンティ GPE CEO

4)キーノートスピーチ ヤスミン・シェリフ ECW事務局長

5)ご挨拶:公明党 谷合正明議員

6)ご挨拶:自民党 逢沢一郎議員

7)現場での連携ケーススタディ:ウクライナを事例に 

7.1  趣旨説明 JNNE 柴田哲子

7.2  フィンランド政府によるウクライナ教育支援  Ms. Sirpa Oksanen, Director of Eastern Europe and Central Asia Unit at the Ministry of Foreign Affairs of Finland

7.3  議論

論点①:人道支援・開発支援の混在する地域で活動するGPE/ECWとの戦略的連携・支援の在り方とは

論点②:ウクライナの教育分野において日本のプレゼンスを高める    支援の在り方とは

8)ご挨拶:自民党青年部代表 鈴木憲和議員

9)ご挨拶:井本佐智子 独立行政法人国際教育協力機構理事

10)ご挨拶:松本好一朗 外務省国際協力局地球規模課題総括課長

11)ご挨拶:公明党 高橋光男議員

12)終わりの言葉・アナウンス GPE事務局 小田理代

セッション開始前に、参加して下さった議員の先生方と。左から、高橋光男議員、谷合正明議員、公明党•山口那津男代表、逢沢一郎議員、山本朋広議員、鈴木憲和議員、ECW・ヤスミン・シェリフ事務局長GPE・ラウラ・フリジェンティCEO

セッションでは、国会議員の皆さま方、ECW、GPEから建設的な意見が出されました。一部を抜粋してお伝えします。

挨拶する山口代表

公明党代表 山口那津男議員 挨拶

教育を受けられない人々に対して、日本が国際機関とともに応援し、困難な状況の改善に貢献していきたい。学校に通えていない子どもたち、学校には通えているが紛争や飢饉などで教育が受けられない子どもたちが世界に数億人いる中で、日本の経験共有や役割が求められていると感じている。

今年は日本がG7の議長国となり、5月に広島でサミットが開催される。その中の重要な議題として地球規模の課題が含まれており、そこには教育も含まれる。岸田総理大臣のリーダーシップのもと、G7の首脳と大きな方向性を共有できるようバックアップしていきたい、とご挨拶いただきました。

GPE ラウラ・フリジェンティCEO キーノートスピーチ

日本は人的資本に大きな投資を行うことで急速な成長を遂げ、世界第2位の経済大国となっていった。いかに教育が社会を安定させてきたか、この好循環が重要であるかを日本はよく理解している。日本の奇跡を起こしたこの教育の好循環を促進するために、岸田首相が教育チャンピョンに表明されて以降、日本が引き続きグローバルにおいて教育チャンピョンであり続けることが重要で、G7において教育を最も重要な課題と位置付けることが重要である。日本が教育のチャンピョンになっていただいたことに感謝する、と述べました。

挨拶する谷合議員

自民党 谷合正明議員 ご挨拶

国際機関において従来より言われている人道、開発、平和のネクサス(連携)は重要。今年はSDGsサミットの開催があるが、日本は新しい開発協力大綱を定める年でもある。人間の安全保障を基軸とした教育に対する、人道、開発、平和のネクサス(連携)が必要になり、GPE、ECWがその役割を担っていると思うため、日本政府としても後押しをしていきたい、とお話いただきました。

挨拶する逢沢議員

自民党 逢沢一郎議員  ご挨拶

教育こそが人の未来を切り開くもので、教育を受けられれば、自己実現できる力となる。ウクライナやミャンマーの子どもたちがリーダーにならなければならない、その人道支援の中心に保健と教育を位置付ける必要がある、とご自身の難民支援の経験も交えて述べられました。

議論で発言する高橋議員

議論 公明党 高橋光男議員

人道支援・開発支援の混在する地域ではコラボレーションやパートナーシップがキーワードであり、国際的な連携が重要。日本の戦後復興、震災からの復興を他国に伝えることができればと、2日前に行われた予算委員会で日本のポーランド支援が決定した話を共有され、また、外務省時代にアンゴラで復興を見届けた経験もお話になりました。

議論 自民党 鈴木憲和議員

今年1月、GPEを始めとするメンバーや鈴木貴子議員と共に行ったエチオピア視察で感じたことをお話になりました。GPEに拠出している額を今後増やし、日本政府のサポートを強めるべきであると感じたとのことです。また、ユースからの質問にもご回答頂きました。

上記以外の主な参加者

山田太郎議員代理・小寺秘書、御法川信英議員代理・関根秘書

広島大学・吉田教授

大妻女子大学・興津教授

外務省国際協力局地球規模課題総括・松本課長、小林課長補佐

独立行政法人国際教育協力機構・井本理事

JICA人間開発部基礎教育グループ・中条様、舘野様

東京書籍株式会社・笹村様

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの皆さま

公益社団法人シャンティ国際ボランティア会の皆さま

特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンの皆さま 公益財団法人 プラン・インターナショナル・ジャパン・澤柳様ら

ウクライナ:GPEのパートナー国加盟、 国連教育変革サミットのハイレベル会議

クレジット:UNICEF/UN0689696/Gilbertson – Highway Child

ウクライナの教育支援に、GPEのパートナーシップが大きな役割を果たしています。その中でも最新の話題ーウクライナのGPEのパートナー国加盟、 国連教育変革サミットのハイレベルイベントを紹介します。

GPEのパートナー国加盟により、ウクライナは4,300万米ドル(約60億円)のグラントを活用できるようになります。教師の専門的能力の開発、子どもたちや教師への心理社会的支援、学習教材の提供、教育施設のインフラや設備の提供、教育の包括的なデジタル化の支援などを含む、ウクライナ政府により定義された優先的な活動を支援します。

ウクライナへはGPEはこれまで、様々な形で支援を行ってきました。9月に行われた国連教育変革サミットではウクライナ教育省と、ハイレベル会議を共催しました。

このハイレベル会議では、教育部門に関連する現在の緊急ニーズに対応するためのウクライナ教育科学省の優先事項の確認が行われ、ウクライナの開発と復興に向けた次の段階へ向けて何を行っていくかを提案することが議論の中心となりました。Education Cannot Wait (ECW)、世界銀行グループ、UNICEF、LEGO財団、Jacobs財団、Microsoft、HP、Google、Zoomなどのリーダー達が集まり、ウクライナの教育対応への支援方法と教育セクターへの追加支援の拡大について議論が行われました。また、フィンランド、エストニア、ノルウェー、ハンガリー、UNESCO、Save the Childrenは、ウクライナの教育セクターのニーズを支援する声明を発表しました。この会議では、関係者間の連携に向けた大きな機運が生まれ、すでに多くの、議論の実現に向けた更なる検討に向けた議論が行われています。

ウクライナの教育大臣からのメッセージ:難民の教育支援のために国際社会ができること

4月21日に、国際教育議連(IPNEd)事務局の主催により、ウクライナ のセルヒィ・シュカーレ(Serhiy Shkarlet)教育大臣による、戦争の教育への影響についての説明がオンラインで行われました。教育大臣はこの説明で、難民の教育支援のために国際社会ができることについて、力強いメッセージをお話しいただきました。このようなウクライナの課題をふまえた教育支援が日本にも求められているといえます。

ウクライナの教育危機

ウクライナの戦争は、教育を受ける権利に壊滅的な影響を及ぼしています。これまでに多くの学校、美術館、幼稚園などの教育機関、ユネスコ文化遺産などが破壊されています。また、戦争が始まって以来、今日までに、500万以上のウクライナ人が難民となり、208人の子どもが死亡し、376人が負傷しています。爆撃により、1,138の教育機関が破壊されています。

ウクライナ教育省による日々の教育機関の破壊状況

ウクライナにおける現在と今後の課題

ウクライナは教育支援を2つのフェーズで考えています。1つは戦争中の支援、そしてもう1つは戦争後の支援です。戦争中の支援に関して、一番の優先課題は、生徒たちの心理的・精神的な支援です。また、次の優先課題は破壊された教育機関の再建です。これは戦争後も必要になります。戦争後の支援に関しては、避難民や難民となっている人々をウクライナに戻し、教育システムの回復を通して、「ウクライナの未来」である子どもたちの育成に集中したいと思っています。

現在カナダなどの一部の国には、ウクライナのカリキュラムで子どもたちが学ぶ仕組みを要求しているところですが、全ての国に対して、ウクライナからの避難民の生徒たちが、ウクライナのカリキュラムを、補助教材としてオンラインで学ぶことをお願いしたいと思います(ウクライナ教育省によるオンラインラーニングのガイドライオンライン教材)。ウクライナの歴史や言葉はウクライナ人としてのアイデンティティを保ち、ウクライナに戻るために重要だからです。また、避難先の国に適応するための一時的な対応として、ウクライナの子どもたちに避難先の国の言語の支援を行なっていただきたいと思います。さらに、避難している教員に、その国の教育関係者が関わっていただければと思います。このような関わりが、ウクライナの教師がその国に心理的に適応するための刺激となると考えています。

GPEによるウクライナとその周辺国の支援

GPEは現在パートナーと連絡を取り合い、 人道支援パートナーと緊密に連携しながら、ウクライナと隣国のモルドバの教育ニーズを支援するための資金動員に取り組んでいるところです。なお、現在ウクライナからの避難民約10万人を受け入れているモルドバは、GPEのパートナー国でありマルチプライヤーの支援対象国でもあります。GPEは、子どもたちと学校を保護するための特別な対策を講じ、人道支援に従事する人達が、安全かつ迅速に、教育を含む必要不可欠なサービスを、それらを必要とする子どもたちに提供することを求める声に応えていきます。

GPEとウクライナとの関係

紛争状況におけるGPEの活動の基本は、「子どもたちの最善の利益の確保」「教育システムの保護」「人道的原則」の3つの原則を軸に構築されています。

GPEは現在パートナーと連絡を取り合い、ECWを含む人道支援パートナーと緊密に連携しながら、ウクライナと隣国のモルドバの教育ニーズを支援するための資金動員に取り組んでいるところです。なお、現在ウクライナからの避難民約10万人を受け入れているモルドバは、GPEのパートナー国でありマルチプライヤーの支援対象国でもあります。

私たちは、子どもたちと学校を保護するための特別な対策を講じ、人道支援に従事する人達が、安全かつ迅速に、教育を含む必要不可欠なサービスを、それらを必要とする子どもたちに提供することを求める声に応えていきます。