JICAが共同出資するエチオピアにおけるマルチプライヤーの関心表明書(Expression of Interest)がGPEの理事会において承認されました

エチオピアの学校給食プログラムの様子 (今年1月撮影)
出典:GPE/Translieu

エチオピアの教育省がGPEに提出していたマルチプライヤーの関心表明書(Expression of Interest)が2023年6月に承認されました。

当該マルチプライヤーは共同出資者であるJICAからの資金(約8百万USドル)を基に、GPEのマルチプライヤー資金(約2百万USドル)と合わせ、合計10.7百万USドルが承認されました。

エチオピアのマルチプライヤー事業では、紛争の影響が色濃く残るティグレイ州、アムハラ州を中心に、教育関連施設の修繕・改修を行います。実施にあたっては、共同出資者であるJICAが中心となり、現地のグラント・エージェントであるUNICEFエチオピア事務所と協働しながら取り組みます(詳細はインタビュー記事を参照)。
GPEマルチプライヤーの枠組みを活用することで、JICAとUNICEFが協働的に現地の教育問題に取り組み、連携を通じて支援の効果が高められることが期待されます。 GPEが推進する「パートナーシップ」:援助協調がJICAと共に実現できる良い例とも言えます。

ユニセフ・エチオピア事務所篭島真理子副代表インタビュー

マルチプライヤーが承認されたエチオピアのグラントエージェントはユニセフのエチオピア事務所です。
その副代表は日本人の篭島真理子さん。 篭島さんに、エチオピアの子どもたちが置かれている状況や、今年1月に鈴木憲和議員と鈴木貴子議員がエチオピアの視察に訪れて下さった時のエピソード、マルチプライヤーによってエチオピアの子どもたちにどんな支援が出来るようになるのかを伺いました。

インタビューに答える
ユニセフ・エチオピアの篭島真理子副代表

インタビューの前に、エチオピアの教育事情をお伝えします。
エチオピアの教育事情:学校へアクセス出来ない子が多数
エチオピアは人口約1億2000万のうち、約70%を25歳以下が占めている若者が多い国です。しかし約3000万人の子どもたちが学校(幼稚園~中学卒業まで)に行かれていません。
背景にあるのは、男児は労働力として仕事に従事し、女児は小さいころから水汲みなどの家事を任されていることや児童婚があります。特に児童婚が思春期の女子の教育に及ぼす影響が大きくなっています。

鈴木憲和議員、鈴木貴子議員のエチオピア視察
エチオピアの教育支援で印象に残ったエピソードを伺うと、今年1月に鈴木憲和議員と鈴木貴子議員が視察に訪れ、議員のお二人と一緒に、学校に来ている子どもたちとその親たちとゆっくり話す機会があったことだという篭島さん。子どもたちの置かれている状況を深く理解することが出来たからだそうです。その中から特に印象的だった会話を教えてくれました。

親たちの言葉
内戦を経験した父親の一人が、「僕らは自分たちを表現できる言葉がなかった。教育がなかったから武器を持って戦ったけれど、もし教育を受けていたら言葉で解決できたと思う」と話していたこと。また、母親の中で「私は字を書くことも読むことも出来ないけれども、教育が大切なことは分かる。なぜかというと、あなたたちは私たちの前に座って話をしているから。私たちは教育を受けていないから、そういう立場に絶対なれない。だから自分の子供たちには教育を受けさせて、そういう立場になれる人間になって欲しい。どんなことがあっても私は子どもたちに教育を受けさせる」という想いを語ってくれた人がいたそうです。
篭島さんは、親は期待を持って、自分たちの犠牲を払って子供に教育を受けさせている。その中で教育の質を上げないと学校に対する不信感や絶望感を抱いてしまいかねないと、ソフト面での支援の大切さも話していました。

支援する国の大変さ
また、議員の先生方との会話を通して、支援をする側の大変さも感じたといいます。
自分たちはいつも支援してもらう立場。議員の先生方は国民の理解を得ないと支援に充てるお金が得られない。日本にいる大変な思想いをしている人たちの理解を得た上で、パートナー国への援助をしてもらうことの難しさも学んだそうです。 ちなみに、議員の先生方と訪問した学校では、11歳で結婚し、離婚したのち学校に戻ってきた14歳の女の子にも出会ったとのこと。児童婚は身近にあることを感じた瞬間だったと振り返っていました。

トゥリグルド(ハジ・ヨニス)小学校の教室にて
(出典:UNICEF/GPE/Hiba Mohamed)

GPEマルチプライヤーで出来るようになること
GPEのマルチプライヤーを使って、まずは、紛争で約2250校ある学校のうち1987校が壊された 北部へ行き、JICAと共に建設や学校の修理をしていくそうです。また、ユニセフは同じ地域での教師教育や子どもたちのメンタルケアなどソフト面でも活動していく予定だとのこと。
北部のディグレイ州では、新型コロナの影響で学校が2年間閉鎖し、その後は内戦が勃発。国内避難民がシェルターとして、また軍が基地として多くの学校を使用しました。そんな中で子供たちは4年間も学校へ行けない状態にありました。今年5月に学校が再開されたものの、学校の破壊、教師の不足、そして地雷や不発弾の危険からすべての子供たちが学校に戻れている状況ではありません。その間に教師の人数も半分近くに減ってしまったとのこと。大変な状況に置かれている子どもたちが教育の場に帰って来られるように多方面から環境を整えていくそうです。

篭島真理子(かごしま まりこ)
ユニセフ・エチオピア事務所副代表。日本の大学卒業後教員に。ウォーリック大学国際比較教育修士号。1998年JPOとしてユニセフメキシコ事務所へ。その後Education Officerとしてユニセフ職員に。アフガニスタン、アンゴラ、ウガンダなどで勤務。2022年10月から現職。

JICAが共同出資として参加するカンボジアとエチオピアにおけるGPEのマルチプライヤーが承認されました!

エチオピアとカンボジアの教育省がそれぞれGPEの理事会に提出をしたマルチプライヤー事業が承認されました。今回は、カンボジアのマルチプライヤーについて取り上げます。

カンボジアの学校にて
出典: GPE/Roun Ry

カンボジアの教育省は、合計1億590万USドルの外部からの資金調達を達成し、それによってGPEのマルチプライヤーがカンボジアにとって上限である3000万USドルで承認されました。JICA(200万USドル)、EU(4390万USドル)、世界銀行(IDAのローン,6000万USドル)が共同出資者となり、共にカンボジア教育省の優先課題である教師の能力強化に取り組み、教育・学習状況の改善を支援します。このプログラムは、ユニセフと世界銀行がグラント・エージェントとなる予定で、来年度中にスタートする予定です。JICAが共同出資する分については、教師教育センターとその支援機構の能力を向上させることで、持続可能な教育・学習支援を行います。

カンボジアのマルチプライヤーについてCEOのコメント

GPEは、JICAがパプアニューギニア、ラオス、セネガルに続き、カンボジアでも新たに共同出資者となったことを喜ばしく思っています。これにより、カンボジアの重要な課題である教員能力強化において、JICAとGPE、その他の機関による支援のシナジーが期待されます。

GPEマルチプライヤー:教育への投資をより多く、より良くするためのインセンティブと財源を提供する革新的な資金調達手段のこと。他の外部資金源と同様に機能。助成金として投資したり、多国間開発銀行や二国間ドナーなどからの譲許的融資の金利を下げるために使用することが可能で、民間資本を含む他の非伝統的な開発資金源と併用することも出来ます。

エチオピアの現地視察報告会:第2回Friends of Educationの開催

鈴木貴子議員、鈴木憲和議員によるエチオピアの現地視察(1面参照)の報告会を2月1日に開催しました。報告会では、まず、日本の教育協力政策の評価と今後に向けた提言について広島大学の石田教授よりお話ししただき、それを受けて、鈴木貴子議員、鈴木憲和議員より、エチオピアの現地視察の報告が行われ、現地視察から得られたメッセージ3点が参加者に伝えられました。

まずは、昨年度の外務省の教育協力政策の第三者評価で評価主任を務めていた広島大学教育開発国際協力研究センターの石田洋子教授に日本の国際教育協力政策に対する評価の概要を説明いただきました。石田教授からは、次期政策策定への提言として、他ドナーや他のアクター・事業との連携を強化し、コレクティブ・インパクトを示すことや、ネットワーク型アプローチや多国間・二国間援助機関との連携を強化すること、GPEなど多様な援助モダリティを活用することなどを含む5点が示されたことについても、説明いただきました。

続いて、鈴木貴子議員、鈴木憲和議員により、エチオピアの現地視察の報告が行われました。2名の議員からは、エチオピアで学校訪問をした際の保護者や児童生徒との印象的な対話などが共有され、以下の3点が重要であることが示されました。

1.ECWへの新たな拠出を行うこと

2.教育を日本が支え、それが平和につながるのだというメッセージを示していくためにも、 GPEへの拠出を増額をしていくこと

3.日本の開発途上国でのビジビリティを上げるためにも日本の組織がCA・GAになること

参加者からは、「これからのフォローアップが大事、相互補完的、バイの連携を進めていくためにも、GPEとの連携をお願いしたい」といった意見や、「教育支援について日本のプレゼンスを高めることが大事」という意見が述べられるなど、第1回に続き、今回も大変熱い議論が交わされました。

次回は3月8日に、GPE とECWの両CEOによる特別セッションが行われる予定です。特別セッションの様子はまたニュースレターで報告いたします。

「Friends of Education」:国際教育協力に関わる多様なステークホルダーで構成されるグループ。日本が教育協力の分野でどのようにビジビリティ―を高め、マルチの枠組みと連携をしながら効果的に貢献していったら良いかを議論。第1回は「国際教育協力政策と日本の外交」のテーマで2022年12月開催。

国会議員によるエチオピアの現地視察

トゥリグルド(ハジ・ヨニス)小学校の教室(出典:UNICEF/GPE/Hiba Mohamed)

1月の上旬に教育のためのグローバルパートナーシップ(Global Partnership for Education/GPE)と教育を後回しにはできない基金(Education Cannot Wait/ECW)の支援を受けている学校とコミュニティを鈴木貴子議員、鈴木憲和議員が訪問しました。

エチオピアでは自然災害や紛争が重なり、それが教育にも影響を与えている国です。現在は、GPE、ECW、世界銀行、UNICEF、Save the Childrenとのパートナーシップにより支援が行われています。

今回の視察では、エチオピアの教育大臣やアフリカ大陸全体を管轄するアフリカ連合の教育・科学・技術・イノベーション担当委員との面会等に加え、首都アディスアベバから東へ約600kmに位置するソマリ州とオロミア州の小学校4校を訪問しました。

これらの学校は、教育における内部効率、公平なアクセス、教育の質の向上を目的としたエチオピア政府の主要プログラムである「公平のための一般教育質向上プログラム」の支援を受けている学校です。このプログラムでは、女児や障害があったり貧困地域に住んでいたりする児童生徒の教育支援や学校給食などを含む支援が行われています。

参加者たちは、 児童だけでなく、その保護者達とも対話を行いました。 彼らの多くは紛争を経験し、学校へ行くことができなかったと言います。それでも、子どもたちにとって教育がいかに大切かを語ってくれました。 「教育は平和につながると思いますか」という鈴木憲和議員の問いかけに、「言うまでもなく、銃ではなく知識と知恵があれば解決できたことはたくさんある」、「あなたたちは、教育を受けたからこそ、ここにいる、それが答えではないか」と、保護者は答えました。

エチオピアでは、まだまだ多くの学校と子どもたちが困難な状況にあります。限られた日本のODAを有効に活用し、効果を高めるためには、複数のドナーがバラバラに単発のプロジェクト型援助を行うのではなく、教育セクター全体で各アクター(教育省、ドナー、国際機関、NGOなど)がGPEが推進をしている援助協調の精神のもと連携し、質の高いセクター計画を策定・実施できるような仕組みを強化していくことが必要です。

鈴木貴子議員による衆議院予算委員会での質疑

1月30日に行われた衆議院予算委員会での質疑で、エチオピアの現地視察に参加した鈴木貴子議員から、教育支援やその中に含まれる学校給食の役割について日本がさらに力を入れていくこと、GPEへの拠出の増額について取り組むべき、という発言が行われました。それの対して、岸田総理大臣からは、GPEへの支援を前向きの取り組むことについては、その通りであるという発言、そして最近は、イエメンの教育回復施策のために620万ドルの拠出を行っており、実績を進めていきたい、という発言をいただきました。

エチオピア:危機や紛争のさなかにあっても教育は優先課題である

日本の国会議員や開発パートナー達が、エチオピアの学校やコミュニティを訪問し、日本国民が国際協力の必要性を理解するために、教育の重要性をどのように進めていくかについて、より深い理解を得ることができました。これは、今年に開催されるG7サミットに向け、開発協力大綱を改定中の日本が、国際教育協力の援助政策を再構築するのに貢献するものです。

2022年2月8日 鈴木憲和(衆議院議員)、鈴木貴子(衆議院議員)、大野容子(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)

学校の図書館で読書をする生徒(エチオピア、バハル・ダール、メスケレム小学校)
(Credit: GPE/Kelley Lynch)

私たちは先月、教育のためのグローバルパートナーシップ(Global Partneship for Education/GPE)と教育を後回しにはできない基金(Education Cannot Wait/ECW)の支援を受けている学校とコミュニティを訪問しました。日本は今年広島で開催されるG7サミットを控え、開発援助大綱の改定を進めており、日本の教育支援政策を見直す上で、今回の訪問はタイムリーなものでした。本ミッションは、世界銀行、ユニセフ、セーブ・ザ・チルドレンのエチオピア事務所が共同で実施運営にあたり、本訪問にも参加しました。

エチオピアにおけるGPEの投資

現在、エチオピアでは300万人以上の子どもたちが学校に通っていないと言われています。同国は2004年からGPEのパートナーであり、GPEは助成金の中でも最も高額な5億5,800万ドル以上を長年にわたって投資しています。GPEは、エチオピア政府や開発パートナーと緊密に連携し、同国の教育システムを強化し、すべての子どもたちが質の高い教育を受けられるよう改善を図っています。セーブ・ザ・チルドレンは学校給食プログラムを実施し、その他の助成金は、世界銀行がグラント・エージェント(GA)として支援を行い、教育省によって実施がされています。

今現在も危機の影響を受けている、子どもたちや若者との出会い

私たちは、首都アディスアベバから東へ約600kmに位置するソマリ州とオロミア州の小学校4校を訪問しました。これらの学校は、一般教育における内部効率、公平なアクセス、質の向上を目的としたエチオピア政府の主要プログラムである「公平のための一般教育質向上プログラム(GEQIP-E)」の支援を受けている、または現在受けている学校です。

私たちが最初に訪問した2つの小学校は、ソマリ州都ジジガから車で1時間ほどの農村部にある小学校です。現地に向かう車中では、広大な大地が完全に乾き、深刻な干ばつで多くの作物が枯れているのが見て取れました。2019年頃まで州の境界で起きていた紛争により、破壊されてしまった学校もありました。小学校は以前GPEが支援し、現在、当学校でのプロジェクトはECWの支援のもと、セーブ・ザ・チルドレンとユニセフが実施しています。国内避難民とホストコミュニティの子どもたちの両方が学校に通っています。

Tuliguled (Haji-Yonis) 小学校で授業に参加する鈴木憲和、鈴木貴子両議員。
(Credit: GPE/Hiba Mohamed)

教育は平和の礎

私たちは子どもたちの親たちにも会いました。彼らの多くは紛争を経験し、学校へ行くことができなかったと言います。それでも、子どもたちにとって教育がいかに大切かを語ってくれました。

紛争を経験し、平和を希求する彼らの声は貴重で重みがありました。教育が生きる力そのものであることを強く実感しました。

また、「教育は平和につながると思いますか」という私たちの問いかけに、彼らはこう答えました。「言うまでもなく、銃ではなく知識と知恵があれば解決できたことはたくさんある」、「あなたたちは、教育を受けたからこそ、ここにいる、それが答えではないか」と。

学校給食プログラムは重要

家庭で十分な食事がとれない貧困地域の子どもたちのために、毎日学校給食が提供されています。学校給食は大切な栄養源です。子どもたちが学校に通い、学ぶ意欲を高めるだけでなく、親が子どもを学校に通わせる動機づけにもなっています。児童婚が根強く残る地域では、親が教育や就学に対するインセンティブを持つことが重要です。

学校給食は、栄養面に配慮し、地域住民の協力のもと実施しています。水と衛生設備も整っています。特に女子が安心して学校に通えるように、安全で清潔なトイレが必要です。学校給食プログラムの実施は、子どもたちの就学率の向上に寄与しています。

Tuliguled (Haji-Yonis) 小学校で給食の準備をする地域コミュニティの方
(Credit: GPE/Hiba Mohamed)

セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナルは、GPEの支援を受け、2020年から教育省と協力して、いくつかの州・郡で学校給食プログラムを実施しています。この包括的なプログラムは、学校給食の提供だけでなく、水と衛生への配慮、省エネ調理、コミュニティへの参加、子どもの参加と心理的サポート、制度改善、能力開発にも重点を置いています。2022年からは、紛争や干ばつなどの緊急事態の影響を受けた子どもたちにも焦点を当てた学校給食プログラムを開始しました。学校給食プログラムは、就学率の向上と中途退学者の減少を目的としています。

インクルーシブ教育

訪問した他の2つの小学校は、ソマリア州の州都ジジガ市に位置しています。GPE/GEQIP-Eの支援を受け、教育省地域教育局が運営しています。教室の脇には車椅子が置かれ、聴覚障害児のための特別クラスでは手話を使った授業が行われていました。

地域教育省と視察参加者(Credit: UNICEF/Mulugeta Ayene)

教育大臣、AU委員と意見交換

アディスアベバのエチオピア教育省では、伊藤在エチオピア日本大使に同行していただき、Berhanu Nega教育大臣と意見交換を行いました。大臣からは、現状と課題についての説明があり、日本からの支援を必要としている点として、以下が挙げられました。

– 紛争で破壊された学校の再建

– 学校給食の提供の継続

– 就学前教育支援

また、識字率ほぼ100%の日本の経験から、就学前教育や初等教育が非常に重要であるとの認識で一致しました。

Berhanu Nega教育大臣、伊藤在エチオピア大使と面会(Credit: Save the Children/Yoko Ono)

さらに、堀内AU日本政府代表部大使とともに、アフリカ大陸全体を管轄するAU教育・科学・技術・イノベーション担当委員のMohamed Belhocine委員とも面会しました。紛争や気候変動などの緊急事態、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響、債務危機などがアフリカの教育にとって大きな課題であり、教育資金も不足していると説明されました。日本の一般市民が国際協力の必要性を理解するために、どのように教育の重要性をアピールすればよいかを尋ねたところ、「教育は平和のための最も重要な資産である」という答えが返ってきました。委員からは、次回のアフリカ開発会議(TICAD)では、これまでなかった「教育」をメインテーマにしてほしいとの強い要望が出されました。

より効果的な日本の教育支援に向けて

エチオピアでは、まだまだ多くの学校と子どもたちが困難な状況にあります。限られた日本のODAを有効に活用し、効果を高めるためには、複数のドナーがバラバラに単発のプロジェクト型援助を行うのではなく、教育セクター全体で各アクター(教育省、ドナー、国際機関、NGOなど)が連携し、質の高いセクター計画を策定・実施できるような仕組みを強化することが必要です。日本の教育支援政策に対する第三者評価で指摘されたように、日本政府はマルチステークホルダー・パートナーシップを推進し、より効率的かつ効果的な教育支援を現場で実施することが必要と思われます。

私たちがエチオピアで目の当たりにした現実は、胸をしめつけるものでした。貧困と闘い、より公平な社会を築くためには、日本ではあたりまえだと思われているシンプルなことが大きな力になります。まず、栄養のある食事、きれいな水、少女や女性を含むすべての人が読み書きを学ぶことができること、そして数を数えることができることなどです。

エチオピアで出会った人々は、教育の重要性、必要性、可能性、そして教育を支援する国際社会への感謝の気持ちを繰り返し語ってくれました。このメッセージを私たちは日本に持ち帰り、日本で開発に携わる人々に伝えたいと思います。

英語の記事はこちらをご覧ください

In Ethiopia, Education Remains a Priority Despite Crises and Conflict

日本政府によるエチオピアとスーダンの支援:コロナ禍でも学びを継続するための、革新的な取り組み

スーダンのハルツームにあるアスフィアバドル基礎女子学校の3年生の生徒たち。(Photo credit: GPE/Kelley Lynch)

COVID-19がもたらす未曾有の教育の問題には 革新的な解決が必要です。エチオピアとスーダンでは、GPEのグラント(無償資金協力)を受け、児童生徒の学習の継続や学校再開に向けた革新的なアプローチをとっています。これは、日本政府の支援によるものです。

日本政府は去年の補正予算からエチオピアとスーダンにイヤーマークをし、GPEを通した支援を行っています。エチオピアとスーダンは、GPEによる新型コロナウィルス対策支援の対象となった66か国のうちの2か国です。GPEによるグラントの総額はそれぞれ、エチオピアはUS$15,000,000(そのうち日本政府は補正予算からUS$3,750,000を拠出)、スーダンはUS$11,000,000 (そのうち日本政府は補正予算からUS$2,750,000を拠出)です。

エチオピアとスーダンの教育システムは、新型コロナウィルスにより深刻な影響を受けました。エチオピアでは、 2020年3月15日に全ての学校が無期限で閉鎖し、2600万人以上の生徒が影響を受けました。スーダンでも、 2020年3月14日以降全ての学校が閉鎖し、推定620万人の生徒が影響を受けました。一時的な休校は、特に通常でも早期退学が多い農村部において、脆弱な世帯の子どもたちが二度と学校教育に戻れなくなる可能性があります。また女子は男子に比べ、一度教育の機会を失うと学校教育から永久に離れる可能性が高く、10代の妊娠率も増加すると予想されます。GPEを通じた日本の支援により、コロナ禍での児童生徒の学習の継続や、学校の安全な再開に向けた取り組みが行われています。

このグラントにより、エチオピアでは学齢期の子ども達、スーダンでは基礎教育レベルの約540万人の子ども達と33,000人の教師が恩恵を受けます。学校の閉鎖は、たとえ緩和策を講じたとしても学習の進捗を遅らせる結果となり、特に恵まれない子ども達にとっては深刻な問題となります。GPEでは国の状況に応じたテクノロジーの活用により、学習のアクセスや質を上げる取り組みに引き続き貢献していきます。

グラントによる2カ国の支援内容の紹介(一部)

エチオピア

就学前段階から高校までを対象にラジオやテレビの教材の制作と放送、ワークシート、練習問題、テストや解答の作成(必要に応じて少数民族の言語に翻訳)/不利な立場にある生徒(牧畜民の女子生徒、最貧困家庭の生徒など)への特別な遠隔学習教材の開発と配布、ラジオやタブレット端末のハードウェアの提供/通信教育、安全、休校中の心理社会的サポートに関するコミュニケーション/教師向けに、学校の再開時の学習評価の実施、加速授業や補習授業の実施と進捗のモニタリングに関する研修/COVID-19の再発防止目的の学校における水、衛生設備および習慣の改善、保健用品や個人防護具の支給

スーダン

基礎学校の生徒(1年生から8年生)を対象としたラジオやテレビ教材の放送新聞のコラムで生徒にアラビア語と数学の課題の配布、生徒の解答を各公立学校に設置されたドロップボックスに保護者が投函、教師による課題の採点と、結果のSMSおよびWhatsAppによる提出/COVID-19予防のためのラジオ啓発キャンペーンの実施/COVID-19助成金の提供(課題を採点した教師への報酬、生徒とのコミュニケーションのための教師用携帯電話等の購入、課題を多く達成した生徒への表彰、石鹸と水の購入、チョーク、ペン/鉛筆、紙当の購入等)/学校再開時の生徒の評価や補習プログラム、学習機会の提供