慈善財団とGPEとの連携の促進:LEGO財団の事例

授業中に教科書を共有するMakbel Henokさん(左、7歳、2年生)とクラスメイト。エチオピア、2019年1月。(Credit: GPE/Alexandra Humme)

GPEでは慈善財団との連携を進めています。その一つとして、今回はLEGO財団とGPEの連携事例を紹介します。

LEGO財団はデンマークに拠点を置く慈善財団で、紛争国・脆弱国、発展途上国でも大規模な プログラムを世界的に実施してきました。同財団は、今後10年間で年間7,500万人の子どもたちに支援の手を差し伸べることを目標とし、特に就学前教育・ 幼児教育の普及に力を入れています。

2021年7月、GPEとLEGO財団は、5年間の多面的パートナーシップを正式に締結し、両団体が協力し て就学前から初等教育までの連続した教育システムの変革に取り組むこととになりました。同時に、 LEGO財団は、GPE理事会の⺠間財団の代表として選出されました。

1. 革新的資金調達による投資:デンマーク政府と共同でGPEの女子教育アクセラレータへ共同プレッジ(1,500万ドル)。さらにサハラ以南のアフリカでGPEの マルチプライヤーを活用し教育プログラムに投資するため2,000万ドルを確保。

2. GPE KIX:サハラ以南のアフリカの、早期学習における遊びに基づく教育法開発支援のKIXに300万ドルを投資。5つのリサーチ・プロ ジェクトを選定。

3. アドボカシー活動:ジェンダー平等を中心に、ドナー、⺠間セクター、フィランソ ロピー間の協力を促す目的でアドボカシー活動をGPEと共同で行う予定。

日本政府によるエチオピアとスーダンの支援:コロナ禍でも学びを継続するための、革新的な取り組み

スーダンのハルツームにあるアスフィアバドル基礎女子学校の3年生の生徒たち。(Photo credit: GPE/Kelley Lynch)

COVID-19がもたらす未曾有の教育の問題には 革新的な解決が必要です。エチオピアとスーダンでは、GPEのグラント(無償資金協力)を受け、児童生徒の学習の継続や学校再開に向けた革新的なアプローチをとっています。これは、日本政府の支援によるものです。

日本政府は去年の補正予算からエチオピアとスーダンにイヤーマークをし、GPEを通した支援を行っています。エチオピアとスーダンは、GPEによる新型コロナウィルス対策支援の対象となった66か国のうちの2か国です。GPEによるグラントの総額はそれぞれ、エチオピアはUS$15,000,000(そのうち日本政府は補正予算からUS$3,750,000を拠出)、スーダンはUS$11,000,000 (そのうち日本政府は補正予算からUS$2,750,000を拠出)です。

エチオピアとスーダンの教育システムは、新型コロナウィルスにより深刻な影響を受けました。エチオピアでは、 2020年3月15日に全ての学校が無期限で閉鎖し、2600万人以上の生徒が影響を受けました。スーダンでも、 2020年3月14日以降全ての学校が閉鎖し、推定620万人の生徒が影響を受けました。一時的な休校は、特に通常でも早期退学が多い農村部において、脆弱な世帯の子どもたちが二度と学校教育に戻れなくなる可能性があります。また女子は男子に比べ、一度教育の機会を失うと学校教育から永久に離れる可能性が高く、10代の妊娠率も増加すると予想されます。GPEを通じた日本の支援により、コロナ禍での児童生徒の学習の継続や、学校の安全な再開に向けた取り組みが行われています。

このグラントにより、エチオピアでは学齢期の子ども達、スーダンでは基礎教育レベルの約540万人の子ども達と33,000人の教師が恩恵を受けます。学校の閉鎖は、たとえ緩和策を講じたとしても学習の進捗を遅らせる結果となり、特に恵まれない子ども達にとっては深刻な問題となります。GPEでは国の状況に応じたテクノロジーの活用により、学習のアクセスや質を上げる取り組みに引き続き貢献していきます。

グラントによる2カ国の支援内容の紹介(一部)

エチオピア

就学前段階から高校までを対象にラジオやテレビの教材の制作と放送、ワークシート、練習問題、テストや解答の作成(必要に応じて少数民族の言語に翻訳)/不利な立場にある生徒(牧畜民の女子生徒、最貧困家庭の生徒など)への特別な遠隔学習教材の開発と配布、ラジオやタブレット端末のハードウェアの提供/通信教育、安全、休校中の心理社会的サポートに関するコミュニケーション/教師向けに、学校の再開時の学習評価の実施、加速授業や補習授業の実施と進捗のモニタリングに関する研修/COVID-19の再発防止目的の学校における水、衛生設備および習慣の改善、保健用品や個人防護具の支給

スーダン

基礎学校の生徒(1年生から8年生)を対象としたラジオやテレビ教材の放送新聞のコラムで生徒にアラビア語と数学の課題の配布、生徒の解答を各公立学校に設置されたドロップボックスに保護者が投函、教師による課題の採点と、結果のSMSおよびWhatsAppによる提出/COVID-19予防のためのラジオ啓発キャンペーンの実施/COVID-19助成金の提供(課題を採点した教師への報酬、生徒とのコミュニケーションのための教師用携帯電話等の購入、課題を多く達成した生徒への表彰、石鹸と水の購入、チョーク、ペン/鉛筆、紙当の購入等)/学校再開時の生徒の評価や補習プログラム、学習機会の提供

「2021年成果報告書」を発表。5年間の教育課題の進展と課題を振り返る

2016年から2020年までの戦略計画である「GPE 2020」の完了に伴い、「2021年成果報告書」では、「GPE 2020」の成果枠組みで設定された指標に対するパートナーシップの進捗と成果を紹介しています。

以下に成果の具体例を紹介します。

より多くの子どもたちが学ぶ

データが入手可能なパートナー国で2010年〜2015年の間に行われた学力調査と2016年〜2019年の間に行われた学力調査の結果を比較したところ、これらの国の70%において学習成果の向上が見られました。

より多くの子どもが訓練を受けた教師から指導を受ける

2015年には訓練を受けた教師1人あたりの初等教育の児童数が40人未満であるパートナー国が25%だったのに対して、2020年には39%に増加しました。

基礎教育修了率が増加し、男女格差も縮小

GPEパートナー国における男女の教育課程修了率の平均値の差は、初等教育で6.1%(2015年)から3.4%(2020年)に、前期中等教育では、9.9%(2015年)から7.2%(2020年)に減少しました。