GPE2022年度次報告書を発表

GPEが発足して以来、パートナー国では1億6,000万人以上の子どもたちが学校に通うことができるようになりました。これは、教育の力によって影響を受けた1億6,000万人の個人の生活です。2022年度の主な動きを紹介します。

・GPEは41カ国に対し、約3億USドルの新規助成金を承認しました。また、9カ国でマルチプライヤーグラントが承認され、総額1億5600万USドル、26のパートナーから7億8600万USドルを活用することができました。

・2022年6月に開催された「教育の変革」プレサミットでは、80のパートナー国の教育大臣が「教育の変革」に関する閣僚コミュニケに署名。2022年5月にもサブサハラ・アフリカの14人の教育大臣が「教育におけるジェンダー変革のためのリーダーシップに関するフリータウンマニフェスト」に署名しました。これらの大臣からの緊急の呼びかけを受け、GPEは2022年9月に開催された「教育変革サミット」において、世界のリーダーに対し、教育への資金拠出を緊急に増やすよう呼びかけました。

・新たにアンゴラ、エルサルバドル、エスワティニ、フィジー、グアテマラ、インドネシア、フィリピン、チュニジア、ウクライナの9カ国がGPEに加盟しました。

・GPE Knowledge and Innovation Exchange(KIX)とEducation Out Loud (EOL)は、それぞれ8000万USドル、6000万USドルを追加。レゴ財団、GPE、国際開発研究センターの間でKIX専用の窓口が設けられたことで、5つの新しい研究イニシアチブが生まれました。Education Out Loudはこれまでに、教育分野における市民社会の活動を支援するため、63カ国で70件の助成金を提供しています。

・ケニアで、政府および民間セクターのパートナーであるエコバンク財団、アバンティ・コミュニケーションズ、国際ロータリーとともに、女子教育啓発プログラムを開始しました。

GPE幹部によるJapan Mission

12月15日、16日にポウレグ・パワー(最高財務責任者)、 カレン・シュロー(最高対外関係責任者代理)、 松吉由希子、(アジア地域における対外関係の上級責任者)が日本を訪問し、GPEと日本の各機関とのパートナーシップについて議論しまいた。

日本の訪問では、3名はまずFriends of Educationのキックオフ会に参加し、カレン・シュロー(最高対外関係責任者代理) が、参加者に対して来年のG7において「教育」を課題として掲げることの重要性を訴えました。また、外務省、経済産業省、文部科学省、財務省、JICA、日本財団、そして国会議員の方々を訪問させていただきました。ご対応いただいた皆様大変ありがとうございました。

Friends of Education キックオフ会開催

国際教育協力に関わる多様なステークホルダーで構成される「Friends of Education」(GPEが事務局を運営)は、日本政府が政策上の重要課題として掲げる「人への投資」を行うにあたり、日本が教育協力の分野でどのようにビジビリティ―を高め、マルチの枠組みと連携をしながら効果的に貢献していったら良いかを議論し、日本政府に対して政策提言を行うことを目的としています。 第1回のキックオフ会が12月15日に開催され、「国際教育協力政策と日本の外交」をテーマとし、国会議員、政府、アカデミア、NGO、民間・財団など合計45名が参加しました。

早稲田大学の黒田一雄教授から「国際教育協力政策と日本の外交に関する議論」というテーマで、「なぜ国際教育協力なのか」「国際教育協力が国益にどのように資するのか」という問いについて、お話をしていただきました。参加者からは、「JICAのプロジェクト等の現場レベルの良いプロジェクトをマルチによる政策レベルと連携することにより、スケールアップしていくことを期待したい」、「特定のパートナー国において日本の団体が効果的にの連携するには具体的なモデルを示すことが必要ではないか」、「最低限の生活を確保しその上で教育を支援することが必要」など、様々な意見が出されました。

次の勉強会は2月1日に開催される予定です。勉強会の様子はまたニュースレターで報告いたします。

9月に開催したアフガニスタンの女子教育に関するオンラインイベントでの若者の意見をもとに、政策提言を行いました

岸田総理と岸田裕子さんへのお手紙

岸田総理と岸田裕子さんへGPEを通じた基礎教育支援を呼びかけるお手紙を、上川陽子議員にお渡ししました。また河西宏一議員、谷合正明議員、寺田静議員、山本ともひろ議員にも直接、政策提言を伝えに伺いました。若者の声に耳を傾けてくださり、本当にありがとうございました。若者として声を上げる大切さをあらためて感じました。

SDGs実施指針改定に関するパートナーシップ会議(第2回)への参加

2023年に改定が予定されている「SDGs実施指針」に関するパートナー会議に参加し、GPEユースとして日本がパートナー国に対し、GPEを通じた基礎教育支援を行う重要性について訴えました。またGPE Youth Ambassador Japanとして政策提言を提出しました。若者の声が届くことを願っています。

インドネシアで開催されたG20において「教育」を最優先アジェンダとするために世界のユースと一丸となって、アクションしました

フェイクニュースを現実のものに。

The Daily Newsに「G20は、新しい教育アプローチによりグローバルな変化をもたらす。教育は出費ではなく、投資であると評価され、数百万人の学習増加を実現」という見出しの記事が出版されることを願って、左記画像を世界の約20ヵ国のユース達と一緒にSNS発信しました

Open Letterを届けよう。

GPEや教育省、NGO等が共同で発信したインドネシア政府へのOpen Letter「G20での教育の優先順位を守るために」をグローバルユースのSNSを活用し、各国のリーダーに向けて発信しました。Letterは、現在2億2200万人以上の子供たちの教育が危機にさらされており、すぐにアクションする必要性があること、すべての子どもが学校に通い、学ぶことは、法的にも道徳的にも、そして社会的にも当然の権利であることは明らかであり、経済的、社会的なにも必要不可欠なことだと訴えています。初等教育から成人教育までの包括的な教育システムに投資することは、COVID-19 の復興を加速させ、これからの持続可能な成長のための基盤を作るために不可欠であることが証明されていることも伝えられました。

結果として、みんなの思いが届き、G20 Bali Leaders’Declaration において「教育アクセス」「女子教育」「デジタルスキル、リテシーと変革」などの多くの分野で「教育」に関する言及がありました。これはこれからの未来のための大きな一歩だと思います。

日本の支援:シリアでの教育システムの変革

シリア中部のホムス地方に住むアメア(15歳)(クレジット:UNICEF/Syria/2022/ Abdallah Agha)

日本によるGPEへの2022年の拠出のうち160米万ドルはシリアの支援に関するものでした。日本の支援による、シリアのノンフォーマル教育プログラムによる教育システムの変革の進捗を報告します。

最近の調査結果によると、シリアでは学齢期の障がいを持つ子どもの65%が学校やその他の教育機関に通ったことがなく、障がいを持つ子どもたちは大きな障壁に直面しています。そのため、本プログラムではノンフォーマル教育プログラムを支援し、アレッポ、ホムス、イドレブで377人の障害のある子どもたち(女子209人、男子168人)に支援が行き届くようになりました。

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シエラレオネ:国内予算の約4分の1を教育に配分、国連教育変革サミットのサイドイベント

シエラレオネでも、GPEとのパートナーシップが大きな役割を果たしています。シエラレオネ大統領の教育へのコミットメント、国連教育変革サミットのミーティングを紹介します。

先日の英ガーディアン紙では、 シエラレオネ大統領が国家予算のほぼ4分の1にあたる22%を教育に投資したことが報じられました。誌面では、シエラレオネ大統領は、これほどの割り当てはリスクであることを認めつつも、 すべての子どもたちが学校に行かなければ国は発展しないと述べました。

GPEはシエラレオネのように自国の教育に対して国内予算を投じる国を支援するなど、さまざまな取り組みにより、途上国政府の能力強化を目指し、教育制度を変革してより持続可能な教育サービスを提供できるように支援を行っています。

9月に行われた国連教育変革サミットでは、GPEはシエラレオネ基礎・上級中等教育省(MBSSE)と共催して会議を開催しました。 LEGO財団、世界銀行グループ、UNICEF、 外務・英連邦・開発省、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、 Dubai Cares、 Echidna Givingなどのリーダー達が、シエラレオネにおける今後の教育目標や、GPE Multiplierを活用した支援に向けて共同資金を動員することなど、協力関係をさらに強化する方法について議論しました。全員が、再度会合を持ち、優先順位と投資をさらに調整することに合意しました。

ウクライナ:GPEのパートナー国加盟、 国連教育変革サミットのハイレベル会議

クレジット:UNICEF/UN0689696/Gilbertson – Highway Child

ウクライナの教育支援に、GPEのパートナーシップが大きな役割を果たしています。その中でも最新の話題ーウクライナのGPEのパートナー国加盟、 国連教育変革サミットのハイレベルイベントを紹介します。

GPEのパートナー国加盟により、ウクライナは4,300万米ドル(約60億円)のグラントを活用できるようになります。教師の専門的能力の開発、子どもたちや教師への心理社会的支援、学習教材の提供、教育施設のインフラや設備の提供、教育の包括的なデジタル化の支援などを含む、ウクライナ政府により定義された優先的な活動を支援します。

ウクライナへはGPEはこれまで、様々な形で支援を行ってきました。9月に行われた国連教育変革サミットではウクライナ教育省と、ハイレベル会議を共催しました。

このハイレベル会議では、教育部門に関連する現在の緊急ニーズに対応するためのウクライナ教育科学省の優先事項の確認が行われ、ウクライナの開発と復興に向けた次の段階へ向けて何を行っていくかを提案することが議論の中心となりました。Education Cannot Wait (ECW)、世界銀行グループ、UNICEF、LEGO財団、Jacobs財団、Microsoft、HP、Google、Zoomなどのリーダー達が集まり、ウクライナの教育対応への支援方法と教育セクターへの追加支援の拡大について議論が行われました。また、フィンランド、エストニア、ノルウェー、ハンガリー、UNESCO、Save the Childrenは、ウクライナの教育セクターのニーズを支援する声明を発表しました。この会議では、関係者間の連携に向けた大きな機運が生まれ、すでに多くの、議論の実現に向けた更なる検討に向けた議論が行われています。

GEPユースによるオンラインイベントを実施:「 9.11から21年:アフガニスタンの女子教育のために日本は何ができるのか」

第1部は70名近くの方が参加し、またユース対象の第2部では定員を上まる多くのユースが参加し、大いに盛り上がりました。

また、当日は世界各国からアフガニスタンのユースも参加しました。時差の関係で参加できなかったユース達からは、ビデオメッセージが寄せられました。

以下のビデオでは第1部を公開しています。ぜひ、アフガニスタンのユースからのメッセージや、アフガニスタンの専門家からのお話、本イベントをご支援いただいた国会議員のメッセージをご覧ください。

第1部のビデオ

以下は、アフガニスタンのユースとの対話をもとに、GPEのユースがまとめた政策提言です。ぜひご覧ください。

日本政府からGPEを通じたパートナー国に対するさらなる「人への投資」である基礎教育支援を頂きますようお願い申し上げます。

GPEは、世界銀行の主導で設立された低所得国や脆弱国の教育問題に特化した世界で唯一のパートナーシップでありグローバルファンドです。 現在世界では約2億4400万人の子どもたちが学校に通えず、さまざまな障壁に直面しています。すべての子ども達、特に女の子に質の高い教育を提供するためには、日本からのGPEへのさらなる支援が必要不可欠です。

事実、昨年イギリスにて開催されたG7での女子教育に関する宣言に日本は合意しました。しかしながら、その翌月に行われたGPEの増資会合で、日本だけが唯一女子教育への支援を含むGPEへの拠出額を明示しませんでした。今年ドイツで開催されたG7のコミュニケにおいても女子教育へのコミットメントを堅持することが明言されております。来年G7の議長国となる日本が女子教育に関する宣言へのコミットメントを果たすことを、他のG7国だけでなく、途上国であるパートナー国も期待をしています。

この背景からGPEユースはタリバン政権下で制限があり、さらなる支援が必要だと考えられる、アフガニスタンの女子教育にフォーカスしたオンラインイベントを開催いたしました。このイベントでは日本の18歳から30歳のユースとともにアフガニスタンの女子教育のために日本は何ができるのかディスカッションを行いました。

ディスカッションの結果として以下のような意見が挙げられました。

包括的な教育課題解決のためグローバルパートナーシップであるGPEと協力した基礎教育プロジェクトを支援すること。

短期的な支援だけではなく、長期的な支援戦略のもと教育支援を実施すること。

日本政府として保健医療だけではなく、人的資本への投資となる教育分野においても国際社会において積極的なリーダーシップを発揮すること。

全ての子ども、特に女の子への基礎教育を提供することは日本政府が実施することのできる社会的・経済的投資のうち、最も経済効率的で影響力の大きいものの一つであると言われています。「女子が学校に通うことができる期間が1年間増えるだけで、女性の収入は10%〜20%増加することができる」というデータもあります。また外務省のODA評価、教育協力政策の評価においても「日本は地球規模課題に対応するために、教育協力におけるネットワーク型アプローチ、多国間・二国間援助機関との連携強化を継続することが重要であり、GPE などのグローバルファンドに一定規模の資金提供をすること」と指摘されております。

そして第77回国連総会における岸田総理大臣による演説においても「日本は人材育成や能力構築に力を入れます。私は、教育は平和の礎という信念の下、教育チャンピオンに就任し、国連教育変革サミットの成果も踏まえ人づくり協力を進めます」との宣言がございました。日本政府からGPEを通じたパートナー国に対するさらなる基礎教育支援を頂きますようお願い申し上げます。

国連教育変革サミット:GPEによるサイドイベントの紹介

Charles North, Acting CEO, GPEと山脇キャスタリアCEO
EdTechラウンドテーブルにて

国連教育変革サミットではGPEが主要な役割を果たし、多くのイベントを開催しました。その1つ、日本からもキャスタリア株式会社が参加したEdTechラウンドテーブルを紹介します

9月21日、国連教育変革サミットの傍ら、 GPE と Global Business Coalition for Education が共催でEdTechラウンドテーブルを開催しました。この非公開のラウンドテーブルでは、企業や業界のリーダーが集まり、低所得層の状況に特に焦点を当てながら、教育テクノロジーを活用した民間と公共のパートナーシップの経験やベストプラクティスの共有、主要な成功要因と課題の探求に焦点を当てて議論しました。

日本からはキャスタリア株式会社の山脇氏が参加しました。また、マイクロソフト、HP、シスコ、アマゾンウェブサービス(AWS)、アバンティ・コミュニケーションズ、TheirWorld、Moby Mediaの代表者が議論に参加しました。さらに、英国外務英連邦開発局(FCDO)とエストニア外務省も出席し、各自の専門知識と経験を共有しました。参加者たちは、教育成果に資するテクノロジーを活用したソリューションを育成・支援し、質の高い教育の普及を図るために共に協力することの重要性を強調しました。

次月号もサミットでGPEが主催したイベントを紹介します。お楽しみに!