TICAD30周年公式サイドイベントFriends of Education「 気候変動危機に対処するための教育協力 」を開催

こちらでの報告が大変遅くなってしまいましたが、9月26日に第5回国際教育協力勉強会FriendsofEducationの特別セッションを開催しました。国会議員や政府関係者、教育関係者の皆さまにご参加いただきました。また、来日中だったチャールズ・ノースDeputy CEOも参加しました。
勉強会ではゲストのユネスコ国際教育計画研究所 (IEEP-UNESCO)・技術協力部の水野谷優部長に気候変動に対処するための教育協力の緊急性・重要性について発表していただきました。

特別セッション議題
1)キーノートスピーチ チャールズ・ノース GPE Deputy CEO
2)参加国会議員ご挨拶:
自民党 逢沢一郎議員、牧原秀樹議員、鈴木貴子議員
3)バーチャル・リアリティーでモザンビークの教育現場を体験
4)IIEP-UNESCO水野谷さん発表「気候変動に対処する教育協力のイニシアチブについて」
5)参加国会議員 ご挨拶
公明党 谷合正明議員、高橋光男議員
6)質疑応答
7)終わりの言葉 GPE事務局

挨拶するチャールズ・ノース(写真左)

チャールズ・ノース副最高経営責任者スピーチ
世界では毎年、自然災害やそれにともなう病気によっておよそ4,000万人の子どもたちの教育が中断されている。また、気候変動の影響を強く受ける国々には、世界の子どもたちのほぼ半数に当たる 10億人の子どもたちが暮らしている。
日本は度重なる自然災害を乗り越えてきた。質の高い教育がいかに国のリスクの軽減に役立つか、レジリエンスを高めるかを証明してきた。世界中各国の言語や文化に絵本、マンガ、アニメ等の日本文化を適応させることで、それらを通し子どもたちは気候災害に対応するスキルを身につけることができる。

参加して下さった議員の皆さま
(左から、公明党 谷合正明議員、自民党・牧原秀樹議、
自民党・鈴木貴子議員、自民党・逢沢一郎議員、公明党・高橋光男議員)

自民党 逢沢一郎議員 ご挨拶
保健・医療・食料の提供も大事であるが、すべての物事の大前提に教育の機会がすべての子どもたちに与えられる ことが確保されていないとならない。それがあって初めてアフリカの未来も切り開くことができる。日本は、GPEが果たしている役割、世界中から期待されていることの大きさをしっかりと受け止めて行動しなければいけない。

自民党 牧原秀樹議員 ご挨拶
自分が環境大臣政務官だった際に、愛知と岡山で開催されたESDの世界大会に参加した。また、議連を立ち上げてその 座長として、ESDの大切さを国会で主張したが、その時も日本では国際教育協力が少しおざなりだったので、今後力を入れていきたい。再来年TICAD9に向けて、国際教育協力を大きな議題として取り上げていくよう後押しをしていきたい。
牧原議員はXで会の回の様子をシェアして下さいました。

自民党 鈴木貴子議員ご挨拶
教育というのは「生きる力」をいかに与えていくか。その人間が持っている力というものを引き出す、それが教育の本質だと思っている。我々日本、日本人はその重要さをわかっていたからこそ奇跡の復興を果たし、第二次世界大戦後、唯一の被爆国としてまた、G7アジア唯一の国として今こうして立っていられるのではないかと思っている。GPEの皆さまと共に教育に対しての投資、出資ではなく投資という考え方を日本政府に対して力強く訴えていくことを申し上げていきたい。
鈴木議員もXで会の様子をシェアして下さいました。

挨拶する鈴木議員

公明党 谷合正明議員ご挨拶
気候変動という国際課題に対し、教育こそ危機を乗り越えていく鍵なのだと認識した。引き続き日本として、GPEを通した支援を公明党としても政府をしっかり引っ張っていけるように取り組んでいきたい。また、教育のデジタル化というのは、先進国と途上国の格差がないようにしていくためにも非常にチャンスだと思っているので、こうした技術もしっかりとSDGsを推進する上で活用出来るよう取り組んでいきたい。
こちらのご挨拶の模様は公明新聞が記事にして下さいました。

公明党 高橋光男議員ご挨拶
現行のODA大綱では気候変動と教育を分けて書いてある。今日の話を踏まえると、この二つの関連性・協力をきちんと推進していかなければならないと思い 、指摘をさせていただきたい。開発課題の対処と気候変動対策の双方に協力すること、民間資金の動員や国際機関との連携、国際的な支援規模の拡大を図るというところまで、日本政府がきちんと責任を果たす重要性を認識し、自分もさらに働きかけていく決意を新たにした。
高橋議員もXで会の様子をシェアして下さいました。

バーチャルリアリティーを体験する議員
写真左から高橋議員、谷合議員、鈴木議員

IIEP-UNESCO水野谷さん発表「気候変動に対処する教育協力のイニシアチブについて」
ホームページ用に寄稿していただいたので、こちらをご覧ください。

発表する水野谷さん(写真右)

上記以外の主な参加者
・早稲田大学 黒田一雄教授(モデレーター)
・広島大学 吉田教授
・外務省 手島国際協力局地球規模課題総括課上席専門官
・JICA 亀井人間開発部部長、中条基礎教育第一チーム課長
・キャスタリア株式会社 山脇代表取締役社長
・株式会社パデコ教育開発部 中野様
・味の素ファウンデーション 山崎様
・公益財団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 小山様、豊田様ら

ユネスコ国際教育計画研究所 水野谷優さん寄稿「 気候変動に対処する教育協力のイニシアチブについて 」

水野谷優さん

気候危機は子どもの教育の危機である。2023年7月は「史上最も暑い31日間」でアントニオ・グテーレス国連事務総長は、「地球温暖化の時代は終わった。地球沸騰化の時代が到来した」とコメントした。気候変動は様々な状況において教育へのアクセスや質の低下を引き起こす。例えば南スーダンでは、大人の胸の高さまで洪水に見舞われる地域があり、その地域では幼稚園や小学校の就学率は非常に低い。マダガスカルではサイクロンが天井や窓を破壊するため、2023年には約15万人の子供の教育に影響があった。こうした気候変動による影響は、裕福でない家庭出身の子供や、障害を持っている子供など、脆弱な状態にある子供の方が大きいため、結果として教育の格差を広げる要因にもなる。

GPEの資金援助を得て、ユネスコ国際教育研究所、ユネスコ本部、Save the Childrenは、20か国の教育省とともに、教育セクター計画、教育予算・戦略に気候変動適応と環境持続可能性を組み込み、教育セクターの強靭性を高め、子どもたちに気候変動の時代に必要な教育を届けるプロジェクトを開始した。以下の五点が、このプロジェクトの具体的な柱になる。
・エビデンスに基づく教育政策と計画
・気候リスクに対する学校の耐性強化
・気候データを教育データベースへの統合
・各セクター間の調整と気候変動資金へのアクセス
・カリキュラム・教科教授法、および教員養成トレーニングの実施

こうした気候変動に関わる教育セクター改革は、発展途上国だけでなく日本でも必要である。日本でも局所的な豪雨、巨大化する台風、それにともなう土砂災害が毎年起こっており、これら五本の柱に代表される教育セクター改革は全世界的に新しい取り組みなので、防災・減災教育や地域を主体とした防災計画など、対外的に日本の知見や経験を提供できる現状がある一方、日本もいかに気候変動を教育カリキュラムに取り入れ、頭(知識・スキル)・心(内在化した価値)・足(実際の行動)が一致するような教育を展開するかという課題に直面している。

国際的には、気候変動と教育の分野において日本の世界的なリーダーシップが期待されており、「持続可能な開発のための教育(ESD)」、防災、環境教育などの分野で、日本が果たせる役割は非常に大きい。民間セクターやJICA、国連などの多国間援助機関、若者、政治家など、さまざまなステークホルダーを巻き込み、教育分野においても日本が世界的なリーダーシップを発揮する動きが高まっている。

今後、日本を含め世界中の子供たちが気候変動により教育を中断することがないよう、また気候変動に対処するための知識やスキルを持つ世代を育てるためにも、国際的に日本の役割は非常に重要だと考えられる。 (文責:IIEP-UNESCO 水野谷優 )

第5回国際教育協力に関する勉強会「気候変動危機に対処するための教育協力」を開催します

9月26日(火)15:30~17:00に衆議院第一議員会館国際会議場にてFriends of Educationを開催します。

今回の勉強会特別セッションでは、GPEの副最高経営責任者チャールズ・ノース( Deputy CEO, Charles North)が来日し、気候変動危機に対処するためになぜ教育協力が重要なのかについて講和。気候変動危機に最も晒されている開発途上国の教育現場で何が起きているのか、モザンビークの現場をバーチャル・リアリティーで体験できる企画も用意しています。また、UNESCO-IIEP(ユネスコ国際教育計画研究所)の水野谷優部長も迎え、教育協力を通じた気候変動に対する多様なステークホルダーの取り組みについて発表いただく予定です。

なお、本イベントはTICAD30周年記念公式サイドイベントに認定されています。

4回目の勉強会の様子
写真右から高橋議員、牧島議員、鈴木議員、山本議員

第4回Friends of Educationを「日本の国際教育協力機関とGPEの連携」というテーマで開催しました

6月13日に第4回Friends of Educationを開催。鈴木憲和議員、高橋光男議員、牧島かれん議員、山本ともひろ議員(五十音順)を始め、NGOや民間企業・財団、アカデミアの皆様にご参加いただきました。

写真右から高橋議員、牧島議員、鈴木議員、山本議員

プログラム
1.はじめの挨拶:GPE事務局
2.モンゴルの連携事例:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンから報告
3.パプアニューギニアの連携事例:JICA、GPEから報告
4. ディスカッション
5.終わりの言葉:GPE事務局

モンゴルの連携事例: セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン豊田モンゴル国事務所ディレクター
・GPEの枠組みを活用しグラントエージェント(資金運用機関)になると、より直接的に相手国の教育政策に関与でき、組織運営面でも財政的な恩恵を受けられ、活動の幅も広がる。
・GPEの仕組みは、複数の教育協力機関の協働が体制的に実現しやすいので、同じ目的の達成に向け、情報やリソースを有効利用できる。
・複数の機関が似ているけれども違うアイデア・施策・経験などを持ち寄ることで、より良い技術・モノ・専門的サービスを相手国政府に提供できる。

パプアニューギニア(PNG)の連携事例:JICA 木田教育政策アドバイザー
・現在、教員養成や教科書・指導書配布等のコンポーネントを含むBEST PNG (Boosting Education Standard Together in PNG)プログラムを実施中(全体予算約15億円、期間:2019-2023年末予定)。JICAは同国での調整機関コーディネーションエージェンシー(CA)を担っている。
・JICA技術協力プロジェクトで小学校3~6年生の理数科教科書が開発した後、GPE資金を活用して1年生2年生の算数教科書に着手したほか教科書配布、教員養成学校への支援、電子データ化支援、タブレット供与などで民間企業、日本大使館、総務省、文部科学省、大学等と連携した“All Japan”の教育支援を実現している。

人間開発部・亀井部長からも、PNG以外でも様々な形でGPEとの連携を進めており、また将来的なグラントエージェント(GA)受託念頭に資格取得のための手続きを行っていると説明がありました。

発言するJICAの担当者

パプアニューギニアの連携事例: GPEタリク上級教育専門官
・320万USドルのGPEマルチプライヤーを通じて、日本政府から1060万USドルの追加融資を受けた。
・GPEは2002年から国の教育計画策定のサポートを行っており、これまで4,000万USドルを投じている。
・2022年5月からCAの役割を担っているJICAと協力して、算数と理科のプロジェクトでプログラムを実施中。

GPE担当者はオンライン参加のため資料はスクリーンに投影されました

鈴木憲和議員からの質問
・日本企業が関わっている案件はあるか。
・学校図書社はビジネスベースかCSRか。

高橋光男議員からのコメント、質問
・G7で国際教育協力の重要性が確認されたことを評価。引き続き継続的な支援を求めていきたい。
・教育の質はどのように測定可能なのか。
・高橋議員はツイートFacebookインスタグラムブログでこの会のことを報告して下さいました。

牧島かれん議員からのコメント
・各国の現状や取り組みを学びながら日本も国際教育の分野でもしっかりと責務を果たしていきたい。

山本ともひろ議員からの質問
・25年前にモンゴルを視察した。「マンホールチルドレン」の現状は?
・パプアニューギニアも視察経験があり、現在の治安について
・山本議員も、この会の様子をツイートして下さいました。

Friends of Education:国際教育協力に関わる多様なステークホルダーで構成されるグループ。日本が教育協力の分野でどのようにビジビリティ―を高め、マルチの枠組みと連携をしながら効果的に貢献していかれるのかを議論しています。

次回Friends of Education予告

次回のFriends of Educationは6月上旬に開催予定です。テーマは「日本の国際教育協力機関とGPEの連携」を予定しています。

次回の目的:

・JICAやセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンがGPEと連携することでどのような相乗効果が生まれているのか、日本にとってどのようなメリットがあるのかを知る。

・教育協力を通じて日本のビジビリティ―を高めるために、多様なステークホルダー間でどのような連携が将来的に可能か検討する。

登壇予定者:JICA人間開発部担当者

      セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン担当者

      GPE上級教育専門官ら

2月のFriends of Educationの様子